人工スキン界隈
夜の物見櫓を俺とレンが歩く。街の光は少なく、もうみんな寝る時間なのかもしれない。
魔王城はまだ執務室の明かりが消えていない、セラとルナが、頑張ってるんだろうな。
モウラとリザは補佐なのに、スターダストや防衛のことばかりやってるな。
どっちも大事なんだけどね。さらに最近はティナまで、そこに加わってる。
あいつは覚えたての技をやたら試したがる。
回転蹴りが多いのは、自分の体重を考慮してなのかな。
下腹部にくらって危ないところだった。
なので、カニバサミで返り討ちにした。
両足で、相手の胴体を挟む。古来から伝わる技だ。
それを見て、面白がったフィーナが俺に試してきたんだが、胴体がちぎれるかと思った。
自分で使ってなんだが、恐ろしい技だ。
モナにやろうとしたら逃げられた、技かけづらいのが難点だね。
そんなことを思い出しながら、レンを見る
「レンには効かない技だな」
つい口に出すと、レンが不思議そうに俺を見つめた。
レンの体は今、人工スキンを外している。ヨウに言われた、重ね着を考慮してだ。
今のレンは骨の上に服をきている状態。
だが、長袖ブラウスとロングスカートで、傍目にはいつものレンだ。
【私もプロレス したいです】
なるほど、ティナとのふざけ合いはプロレスだったのか。
良かった虐待とは思われてない。
「そうだな、人工スキンをしっかり貼れるようになったら、レンも参加できるな」
流石に骨にプロレス衣装は玄人向けがすぎる。
俺以外は楽しめないだろ。
【肌、前みたいになれますか?】
「戻す、そのつもりで今も試してる」
浄火の影響はまだ残っている。魔法自体を弾くのか、定着のワンドで固定しようにも上手くいかない。
間に合わせ薄手のコルセットなりで、一度膜を作ってから人工スキンを貼ったのだが、見た目はいいが、重ね着状態で。
動きが阻害される。
敵の襲撃があった場合、そのわずかの差は勝敗を分ける。逆なら、レンはその隙を見逃さない。
考え事をしていたら、レンが俺の手を取る。そして、見つめられた。
レンの手と顔、それはダンジョンで俺が最初に作った部分。
レンはそれだけは、炎の中守ったのだ。
俺の手を自分の頬に当て少しじっとしてから、手を離す。
【今は、ここだけしかセトを感じられない】
レンは筆談の紙で顔を隠す。
紙から目だけを覗かせる。
寂しがってるいるようにも、照れているようにも見える。
肌のことは、戦いのためだけじゃない。
何より触り心地が違う
素材の組み合わせ……そういえば、長いことバックラーの修繕もしてないな。
何かを思いつきそうになると、レンにつねられた。
「痛い」
【二人っきりです】
少しむくれるレンが顔を寄せる。
ちょっと下が気になるが、俺も顔をよせる。
◇◇◆
物見櫓を降りると、ナツメがいる。
以前ヨウに作ってもらったドレス姿だ。あれ以降、昼間は着ていなかったのに珍しい。
「頂き物を大事にしたいので」
明るい場所で着るのが恥ずかしいんだろうな。
レンも降りてくると、ナツメのドレスを見つめている。
背中が大胆に開いたデザインなので、人工スキンと機械部分が見えていた。
「そうだ、ナツメの人工スキンってどこから手に入れてるんだ?」
「どこから、初めから装着されていたので、わかりません」
その答えに少し落胆するも、違う考えが浮かぶ。
「破損した時とは?」
「薄く伸ばして隠すこともできますが、基本そのままが多いです。でも」
ナツメはふと考える。
「ここにくる時は、セラさんが補充してくれました」
ナツメは、胸元に目線を落とす。
「以前の私は、顔くらいしか人工スキンが残ってませんでしたから」
機人。珍しい種族で、俺もナツメしか見たことがない。
「私は、いらないと思ったのですが、服を着ると、必要なのことがわかります」
「逆だな、肌があるから服を着る」
言ってみて、自分でもしっくりくる。
レンもうなづいてるな。
いや、この考えは俺たちにしかわからないか。
モナもわかってくれそうだな。
「よくわかりません」
ナツメが困ってるな。
「いいよ。なんか、レンの最初を思い出しただけだ」
「そうですか」
まだ納得はできてないみたいだ。
「それはそうと、私夜目が効くので……」
まさか、さっきのを見られていたか。
「夜の見張りなら、変わりますよ」
良かった。違う話だった。
そう言って、櫓の梯子にナツメは手をかけようとするが、振り向いて。
「先ほどの行為も、肌が合ってこそですね」
少し、恥ずかしそうに見えるのは気のせいか?
そして見られていた。横を見ると。
レンが親指を立て、ナツメに向ける。
ナツメも同じように返した。
何?その行動?
何が通じたの?




