モウラの立ち位置
モウラとモナがリングの上で技を掛け合っている。
普段の戦いとは違う動き。モウラに言わせると「魅せる戦い方だそうだ」
二人は何か会話をしながら、技を掛け、離れると繰り返す。
俺は、倉庫内を見る。一度は焼き払われた場所だが、無事再建できた。
「火事の前より立派になった」
などと職人達は喜んでいたが、損害は出ただろうに、強い人たちだ。
何よりあの時のレン達の異形を見ても、人々が離れなかった。
後ろから大きな音が聞こえる、モナとモウラの戦い。と言うより稽古だな。
それは、スピードを増し始めた。
モウラの蹴りがモナを捉える。いやそれは空を切る。
モナのスピードがさらに上がる。
狭い場所で制限されているとはいえ、常人ではモナを追えない。
だが、モウラも帝国で勇者と呼ばれていただけはある。
先読みなのか、モウラは位置を調整するようにすり足で、モナをロープ際へ追い込む。
背後をロープに塞がれたモナへ、モウラが大きく間合いを詰めようとする。
モナは体勢を低くし、モウラの横を抜けようとするが、モウラが腕がモナの腰を捉え、投げる。
だが瞬時に、回転しモナは抜け出す。モナが立ち上げると、今度はモウラが、ロープを背にする。
「ダメだ、降参」
モウラは床に座り込む。
「でも、先読みは凄かったし、掴まれた」
「限られた場所だからね、広かったら無理」
モウラは上を見上げる。
「こないだね、人狼にやられてわかったの……今のままじゃ戦えないって、あの場に入り込めないって」
「あれは……相手が悪すぎただけだ」
つい、俺が口を挟んでしまう。
「あの場にいたのが、カッツェやフィーナなら、まだ戦ってた」
モウラの目が少し潤んでいる。
涙をこぼさないために上を見ていたのか、それは溢れてしまう。
「前に、ヴェルと戦って負けたけど、戦えるって思ってた。
でも、違ったんだ。魅せる戦いの中で戦えると勘違いしてただけ」
小さく息を吐く。
「私は人狼と戦いにすらならなかった」
モウラは涙を拭おうともしなかった。
俺もモナもただ、見ている。
知ってる。悲しいんじゃない、悔しいんだ。
もっとやれる。
敵が人外だからしょうがないなんて、モウラは思っていない。
あの時、俺とモウラはモナの戦いを見て圧倒された。
それでもなお、モウラは確認したかったのだ、自分とモナの、人狼との差を。
それを知っても、泣いても、モウラはまた人狼の前に、敵の前に立つだろう。
フィーナ、それに姉であるカッツェも敵に背を向けないからだ。
後日、フィーナにしごかれ、叫ぶモウラを見た。
「やめて!腹筋は刃物を弾かない!弾かないから!」
「信心が足りませんね」
何してんの?




