物見櫓とリング
物見櫓を繋ぐ渡り廊下からは、街中がよく見える。あと高い位置にあるので魔王城もよく見える。
物見櫓の点検でモナと歩く。俺は高すぎてちょっと怖いが、モナは平気そうに歩くな。
欄干側は、モナに点検して貰おう。
それと砦にモナ兄弟が戻ってきた。お嫁さん見つかったのだな。良いことだ。
とはいえ戻ってこないのもいるから、苦戦してるのかな。
「モナの兄弟は、人間に変身しないのか?」
兄弟達もその嫁も、変身する様子が見えない。
「みんな人間として生きたいわけじゃないからね」
そらそうか。
「モナは人間として生きたいのか」
「そうだね。ちょっと迷ってたけど、戦いも生活も人間の時間が多くなると思うよ」
しばらく、迷っていたモナはヨウのおかげと、嫁同士の話し合いで最近は落ち着いてる。
神秘的にも見える変身までしたしな。
「なんで最初は狼みたいだったのかね」
「私もわからないけど、自信のなさも関係してるのかも」
モナの尻尾。以前は、モフモフな毛量多めだったのが、今は細くすっきりした感じだ。
どっちが良いともいえないが、白銀で統一しているモナの服装とよく合っている。
「ミリアも変身するけど、あっちは元の雰囲気残してるものな」
俺の問いにモナが頭を傾げる。
「ミリアも謎。私を追ってきたのに、軍にいるしね」
今はアレクの下で動いてるな。俺を嫌ってるの少しは直るといいな。
「人狼はクライブが絡んでるって言ってたけど、クライブって軍にも関わってるんだよね」
モナが少し心配そうにしている。
「アレクが牽制してるとは思うが、実際はどこまで入り込めてるのかな。それこそミリアに聞けないかな」
その答えが出る前に、下から声がする。
モウラが呼んでいる。
俺は恐る恐る梯子を降りると、モナはまだ上にいる。
「どうしたモナ?」
俺の声に反応するが、梯子の方へ動く様子もない。
欄干に立つと、モナは軽々とジャンプをし、ふわりと着地した。
体全体を使って勢いを殺した?
「いつの間にそんな…」
驚く俺の背中から拍手が上がる。
「ねーちゃんすげー」
モナの変化に戸惑っていた子供達も、モナが前と変わらないことに、
ようやく安心したらしい。いや、すごいねーちゃんに格上げされたか。
子供達がモナの元へ集まる。
どさくさに紛れて触ってる子供よ。一つ言っておく。
「それは俺の尻だ」
「いや私のお尻だよ」
◇◇◆
スターダストの練習場ができた。
とはいえ、倉庫街の倉庫を一つ専用にしただけなんだが、モウラとしてはこれが良いらしい。
「簡素な空間で鍛え上げて、人前で華やかにやる。その差がたまらなく良いんです」
何か、信念があるんだろうな。聖撃みたいに聖堂でやるよりは良いか。
あそこ夜行くと、黙々と殴り合ってたりするんだよな。
プロレスとは対極だが、フィーナに言わせると「肉体の試し合い」だと言う。
残念ながら俺はまだその境地にいない。
こないだの百本突きで限界を感じるくらいにひ弱だ。
まだ何もない倉庫に背丈くらいの岩?
俺くらいの大きさから小さい石まであるな。
「なんだこれ?」
俺は一番大きい岩を持ち上げようとするが、これは無理。
モナも試したが、無理っぽいな。
あとは手で握れるくらいの石もあるな。
「訓練用ですよ」
モウラは石を握ると、そのまま拳を突き出した。
真似してみると、握力をかなり使うのと、伸ばした腕が辛い。
「最初は軽いものから、徐々に重くしていきます」
小さいのはわかるが、一番大きいのは無理があるな。
「荷車で運ばれたのをカッツェが倉庫に入れました」
うむ。さすがカッツェ。
そんな話をしていると、倉庫前に荷馬車が止まり資材が運び込まれる。
「ついにきましたね。リング」
モウラの目が輝いている。
俺は見たことがないので、完成系が想像できないが、モウラとビキニアーマー隊が楽しそうに組み立て始める。
作り終わる頃には、日が暮れていた。
少し床が高く設置されたリング。周りは縄で囲まれている。なんだ逃げ場を塞ぐのか。
それと床が低くリング。こちらは縄がないな。
ビキニアーマー隊は家庭があるらしく帰っていく。そういや筋肉信者と結婚したものもいるんだっけか。
俺たち以外はいなくなると、モウラがリングに上がる。
「モナ、少しやらない?」
モウラは、体の動きを確かめるように動く。
力はモウラで、速さはモナ。
お互い武器なしだと、どっちが強いのだろう。




