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最強スケルトンに恋をした ~嫁達が強すぎて魔王認定されました~  作者: Hike技研
魔王城完成 そして

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ニンゲンヤメマスカ

朝起きると、イーゼルの姿はもうなかった。

俺の汗とイーゼルの匂いが混じっている。浮気したわけでもないのに少し心苦しい。


聖堂では、筋肉信者の掛け声が響いている。

こいつらと汗流せば、罪悪感も匂いも消えるかなぁ。




「セトさん!一緒にどうですか!」


フィーナに見つかった。




足を肩幅に広げ腰を落として正拳突きをしてる。


地味に見えるが、それキツイやつだよね。


今日は三十人くらいか。息を合わせて突きを放つ姿は綺麗とも言える。


ただし聖堂でなければだ。



「少しやってみるか」


俺はフィーナの隣で真似をしてみる。


「ふふふ、セトさんもいずれ最強に」


「ならないよ」


ちょっとやそっとで、君たちみたいになれるわけないだろ。


それこそクライブのように自分を人体実験……


怖い考えに頭を振る。



「なぁフィーナ。聖撃の理念ってなんだ」


「セトさん!ついに入信なさるんですね!」


フィーナの声に、筋肉信者の掛け声が止まる。



視線が集まる。


「いや、そう言うわけじゃないんだ。ただの興味」


「良いですよ。きっかけはそんなものからで」


筋肉信者もうなづく。三十人が一斉にうなづくな。怖いわ。




「では、千本突きっと言いたいところですが、初心者ですからね百本突きからで」


ん?



「聖撃!中段ひゃっぽぉうんづぅくぃぃぃ!!!」


今なんて?


「最初の一撃は、祈りとともに。癒しの左!」


みんなが俺を見ている。


逃げられない。俺は仕方なく突きを放つ。

フィーナが微笑んでいる。嬉しそうだなおい。

「癒しの左、裁きの右──聖撃ッ!」

「せいやぁああ!」


聖堂に響く声。



「ワンツー聖撃!一撃必殺に信念を!」

続く掛け声、いや一撃なら百も突かせるなよ。


三十を超える頃、足がプルプルしてきた。




「心を鍛えよ!肉体の限界を超えよ!」


「汝!隣人の筋肉を超えよ!」


「昨日の自分を超えよ!」


「超えよ!」

一つ突くごとに叫ばれ。俺が突くのを待っている。

フィーナはもちろん、信者たちも余裕である。


「羨むのなら、鍛えろ」

「筋肉の鎧をまとい天を突け」

「音より早く光より早く」


「両親に感謝」

「やらない偽善よりやる偽善」


なんて?







おかしい、限界だと言う俺の言葉をフィーナは聞かない。


「セトさん!後十回だけ頑張りましょう!」


「まだいけます。足のことは一度忘れてもう十回」



とんでもない大司教様である。


終わって、倒れる俺にフィーナと筋肉信者から拍手が送られる。


恥ずかしいが、不思議と気分がいい。


「これが聖撃の信念です」


「何が」


「さっきの掛け声ですよ」


「ごめん。突くことが精一杯で覚えてない」



「もう一丁行きますか?」



もう無理。


倒れて横を見るとヴェルとアッシュが見にきていた。ヴェルが腹抱えて笑ってやがる。

声をかけようと立ちあがろうとしたが、立てなかった。




◇◇◆


朝からえらい目にあった。軽く汗を拭い。どうにか自分の足でバルコニーへ辿り着き。


街を見下ろしながら、一息つく。

「何か食べておくと筋肉がつきやすいですよ」


フィーナが茹で卵とミルクを持ってきてくれる。軽めのものでありがたい。


「それで聖撃の信念でしたね」

「さっきの掛け声か」


「あれ千までありますからね」

百でも途中でネタ切れっぽかったけどな。



「まぁ掛け声的にするには無理がありました」

俺の顔で察したか、照れてやがる。


「根本は、力なき正義は無力なりですね」


なんかまともそうなのが、きたな。


「それとまず、限界を決めるな突破しろ」


はい聖撃。


「そもそも大教会からの分派だよな。マグナスが始めたのか」


「そうです。マグナス様が、私財を使い作り上げたのが聖撃です」

筋肉ダルマことマグナス。


ここに来ると悪ふざけが多いが、聖撃教会のトップ。


「セトさんが気にしてるのは、アッシュやヴェルのことですよね」


フィーナもふざけてるようで、昨日のことは気にしていたか。


「そうだな、それにイーゼルとも昨日話した。教会の罪ってのは…」



「蓮華会の始まりですね。聖撃と同じく分派してれば良かったのですが…」


フィーナが言い淀む。



その思想だけが教会の一部で浸透し、幾つもの組織に別れたらしい。


始まりは救済。


癒し魔法は存在せず、フィーナの光魔法も肉体強化でしかない。


治癒の研究だったそれは、次第に形を変えた。


クライブと同じ、救うための思考が止まらなかった。


いや、俺たち職人と同じで、もっと良いものを求めた結果だったのか。




人で無くなっても、泥に埋もれても、花を咲かせようとした研究。


蓮の花は、静かに教会に浸透していった。



人を超える。人でありながらなのか、人をやめてでもなのか。


そこの違いが、蓮華と聖撃なのだろう。


そして、蓮華は実態が見えない。







俺が考えに耽っていると、フィーナがミルクに何か溶かしてるな。



「お前、人間辞める気か!」



「いえ、これは体良いものです!セトさんも飲みますか?」



本気なのか冗談なのか、いまひとつわからないフィーナである。



後で聞いたら、豆乾燥させて粉にしてるんだって、筋肉信者たちも飲んでいるようで、今度売り出すらしい。


一度ルナに検品してもらおう。





後に売れ筋輸出品になることを、この時はまだ知らない。


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