暗部と人外
少し、間違えたかもしれない。
二人の話を聞いた上で、街やみんなを心配するのはいい。
ただ、そんな事と言うべきではなかった。
そんな俺を見透かしてか、アッシュが寄ってくる。
「大事にしないように、気を回したのですよね」
セラとは違う。だが、アッシュも人の心を読むような言い方をする。
ずっと観察してきたのだろう。
自分の、ヴェルの敵になるかどうかを。
「いや、少し頭に血が昇ってた。ごめん、アッシュ、ヴェル」
ヴェルは、みんながいなくなったことで、気が抜けたのかあからさまに嫌な顔をする。
「セト、生意気」
「子供か」
「哀れんで貰う気もないけど、そんな事って」
うん、これは長年言われそうだ。
「ごめん」
謝る俺と目を合わせない。俯くヴェル。
「ヴェル」
アッシュの言葉に、ヴェルはバツが悪そうに顔を上げる。
「わかってるわよ。アッシュが言うようにセトは大事にしないようにした」
「それに、今を優先した」
アッシュがヴェルに優しく諭す。
これにて、一件落着っと言いたいところだが、違和感が残っている。
「赤い髪がアッシュ達とは別働隊でいたのはわかる。だが、なぜ俺たちを襲う側にいる?」
「行きすぎた人外として狩りにきたのかもしれません」
「どこが?いや、教会か。教皇ランスが襲う指示を出すのか?イーゼルもいるのに」
俺の言葉にアッシュが少し沈黙。
「セト、あのね。教会だけど教会じゃないの」
「今はクライブが担ってるであろう、教会の暗部」
「人外で人外を狩り、勇者を認定する組織です」
教会の理に基づき行動する組織。
武装組織とも言えるそれは、教会に不都合な枝葉を落とす組織。
表面上は、魔物からの救済。
そして戦力として蓮華の成功例を使う。
やはり違和感が消えない。
「ガイナスは浄火を使ったことからも、その組織が絡んでるのだろ」
アッシュとヴェルはうなづく。
「人狼は、クライブとの関係を認めてなかったが、あの口ぶりではクライブを嫌悪している」
俺は口に出しながら考えをまとめていく。
「知ってるだけではない、近い関係。ガイナスより適性があったとも言っていた」
「それに、失敗作と見ていたレンには見向きもしない。リザの時もそのそぶりは見えなかった」
「リザが、ヴェルの血で再生を手に入れたことにより、ガイナスが狙ってきた」
ダメだ、違う。
根本的に何かが違う。
「今日は、休みましょう」
アッシュがお茶を飲み干し、席を立つ。
ヴェルとアッシュが去り、俺は一人聖堂に残る。
普段は筋肉信者達が、騒がしくいるが、今日は静かだ。
都合よく蓮華会の上澄みを奪う組織。
今はクライブがそれを利用し、ガイナス、人狼まで投入してきた。赤い髪の少女もか。
そう、都合よくだ。
話す必要がある。自分の頭が足りないな。なら動くまでだ。
俺は聖堂を後にする。




