変化と人外
「仕事は済んだのかい」
セラがまだ執務室にいた。
「大したことはしてないけどな」
俺の言葉にセラは苦笑する。
「君的には大したことではないかもしれないね。でも街は大きくなってるよ」
「人の話聞いたりしてるだけだけどな」
「それくらいでいいよ。その方が下は動きやすい」
「そんなもの?」
「そんなものだよ」
セラは軽く伸びをして答える。
「少しは休めよ」
「休んでるよ。さっきもルナにお茶を入れてもらった」
「そうじゃなくて、しっかり寝ろってこと」
少しセラは考えている。
「そうだね。セト君が相手をしてくれるならそうしよう」
「それでお前が寝るならいくらでも」
俺の返答を予測してなかったのか、セラが少し驚く。
「言うようになったじゃない」
「おかげさまでな」
セラは満足気に笑い。俺を見る。
「でも、本当は変化があった子が気になるんじゃない」
やはり、こいつの方が上手だ。敵う気がしない。
「お前はどこで見てるんだ?」
「何も見てないよ」
しれっと言うが、毎度怖い。
「あまり言うなよ」
「本人が言うまで言う気はないよ」
「やっぱ知ってるじゃないか」
「誘導尋問とは成長したねセト君」
もうやだ、手に負えない。
「セト君の手には収まると思うよ」
自分の胸を少し持ち上げる。
「そんな話してねーよ」
「相手してくれるって言ったじゃない」
俺たちの行動を扉を開けたルナがじっと見てる。
しまった気が付かなかった。
「お帰りなさい」
「ただいま」
怖い。
◇◇◆
結局、セラとは夜を過ごさず。
ベッドにはナイトガウン姿のモナがいる。
なんだか、あいつの思惑通りだな。
さっきの一件をモナに話すと苦笑してる。
「まぁセラに隠し事はできないっというか、ヴェルにも言われたよ」
「変身のこと?」
「いや、変わったねって」
「それは、みんなわかるよ。みんなモナを見てるから」
その言葉に少し照れるモナ。
「あと、みんなモナが今よりもっと強くなるって言ってるな」
「そうだといいんだけどね」
ベッドに横になり顔を枕に埋める。
少し考え事をしてるのか、言う言葉を選んでいるのか。
時折尻尾が揺れる。
「ガイナスに負けただろ」
俺は沈黙する。
「あの時さ、レンがいたから助かったけど」
枕を掴む手に力が入る
「私の後ろに誰かいた時、それじゃ守れない」
「あの時はリザ救出もあったから……」
「それもあるけど、ヴェルはレンと一緒に立ち向かった」
あーこれだったんだ。負けもこたえたのだろう。
それとは別に
「私はさ、レンの横に、一緒に戦えるようになりたいんだ」
「レンもそれを願ってる」
モナの独白につい答えてしまった。
だがモナは俺を見つめる。
「そうだといいな。レンも私を見てくれてるのかな」
「それは断言できる。レンはモナを見てるし、強いと言ってる」
「強いのは獣の、モーナフェルムとしての私だ」
そのモナの言葉を俺は飲み込む。
そして、扉をノックする音がする。ヴェルなら勝手に入ってくる。
モナを見ると頷くので、扉を開ける。
レンがナイトガウン姿で立っていた。
◇◆◆
レンとモナに挟まれて横になっている。
いつもならヒャッホーなのに今日は少し空気が重い。
沈黙を破ったのはレンだった。いや筆談だったから。沈黙は破ってない。
【モナはモナとして強い】
なんだろ、全体を認めてるってことか?
「ヴェルじゃないけど、人として強くなりたいんだ」
【獣でも強いけど人としても強い】
「でも」
食い下がるモナに、構わずさらに書き続ける。いつもより殴り書きに見える。
レンが珍しく怒ってる?
【モナは可愛さも強さも持ってる】
【モナはセトの子を産める】
2枚目を書いた後、レンが消す。
遅い、もう俺もモナも見た。
レンが持つ後ろめたさ。モナへの羨望が出てしまったか。
レンは一人で俺のベッドに入らない。モナと一緒にいることが多い。
それは、不完全な自分をモナに補ってもらおうとしていたのか。
レンが枕に顔を埋める。
お互いが認めているのにうまく伝わらない。
もどかしい。
俺はそっとランプを消す。
レンの冷たい体と、モナの温かい体に挟まれて目を閉じた。
みんな起きてるのに、静かだった。
ガッ
急に扉が開く。ノックなどない。
「暗っ」
ヴェルである。
「お前、空気読めよ」
「読んだわよ!」
そして俺にまたがる。
そこかよ!
レンの筆談メモを見てため息をつく。
「レン!あんたが悪い」
「おい」
「黙って」
俺の抗議はヴェルに遮られる。
というか物理的に口に手を当てられる。
「子供が作れるかどうかでセトが嫁を選ぶと思う?」
ヴェルの言葉にレンが枕から顔をあげる。
「スケルトンに肉付けして嫁!まず普通じゃないのよ」
あれヴェルも怒ってるな。俺は跨られた上に押さえつけられてるから動けないし喋れない。
「だから、そこを気にしてもしょうがないの!それにね」
ヴェルはモナの方を向く。
「獣と知っておいて嫁にする!モナどう?いるこんな奴」
モナもびっくりして言葉がないみたいだな。
「セトはモナが獣の時も欲情してるのよ」
いや、あれは欲情とはまた違う。くそっ声が出せない。
ふーっとヴェルが深いため息をつく。
「ごめん、私もだわ。だから本当の姿をセトに見せるのを躊躇うのよね」
ヴェルの背中から赤い足が生える。
以前はよく見えなかったが、左右三本、合わせて六本か。前は燃えていたが、今日は赤いだけだな。
それでも少し光っているか、俺たちを照らす。
ヴェルの顔も照らされる。
綺麗だが、この状況だと何されるの?
その足はレンとモナごと俺を包む。
温かい。ヴェルは俺の口から手を離すと、そのまま覆い被さる。
「レンもモナも変なことで悩まないで」
ヴェルの足が少し強めに俺たちを抱きしめるが、誰も抵抗しない。
顔が近い。布団の中で内緒話してるような感じだが、側から見ると完全に捕食されてる。
「セト。今の正直な感想は?」
「みんなが密着して、どうにかなりそう」
その言葉にモナとレンが吹き出す。
少し頭突きに近い口付けをヴェルにされ、ヴェルの背中から足が消えた。
レンとモナにも見つめられる。
「私たち人外を変にした責任は、こいつに取ってもらう。以上よ」
共通の敵を作れば、まとまりやすいとは聞いたことがある。
ともあれ、俺はもう限界だったので難しい話は遠慮した。
セラの思惑通りだったかもしれない。
この後、むっちゃヒャッホイした。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
耐性のある常連さんにもドン引きされそうな回ですが、
私らしい変態文章で、書きたいことが書けて満足してます。
この先を読みたい、まだブクマしてない方いらっしゃいましたら
ブクマしていただけると作者の変態度が増します。




