北の森
魔王城の丘を取り囲む森を北へ向かう人が通る道はあるが、南側や東ほど整備されていない西通り
丘の森とは違い長年聳える樹木が陽の光を遮る
「このあたりも手を加えるべきなのかな」
俺の言葉に反応はするが、レンは微笑むだけだ
「まだいいか」
レンは目を細める
多分、肯定なんだろうな
ガイナス襲撃以降、レンの体は不完全だ。
いや、スケルトンとしては普通なのだが、以前の人間のような体はしていない。
人間?
「前みたいなスキンと今みたいに貼り合わせとで感覚は違うか?」
レンはポカンと俺を見る
多分、質問の意味がわからないのだろうな
「今の体で満足か?」
レンは少し口を開けるが、スケルトンの体に声帯はない
ほんの少し息が漏れる音が聞こえる
『はい』
そう言ってるのだろう。
レンは西の森を眺めている。
俺もそれ以上は追求しないが、浄火の影響を誤魔化してるに過ぎない今の状態をどうにかしたいところだ。
歩みを進めると、北地区へ出る。
特に手を加えた覚えはないが、少し開けた空間が見えてくる。
その先にイーゼルとボルガ、それに強面の男達の姿が見える。
俺が声をかける前にイーゼルが気が付く。
手を振られるが、そこから動く気配ない。
ボルガも立ってるだけだし、襲われてるわけでもない、打ち合わせ中かな。
邪魔しちゃ悪いと遠巻きに見ていると、男の一人が寄ってくる。
俺より一回り。いやもっと上かな。
言っては悪いが人相が悪いヒゲ面。城下町で見た顔ではあるはずだが、壮年の男性でヒゲ面多すぎて覚えられない。
警戒しようかと思ったが、レンはキョロキョロ周りを見ている。
少なくとも攻撃されることはなさそうだ、なら偉そうにしているのが得策だな。
「旦那!」
「なんだ?」
「いやすまないセト魔王様」
「様も魔王もいらないよ」
聞けばこの男は流れもので、しかも嫁が人外だと言う。
ここなら、二人で生きていけると言うことで移住してきたらしい。
「こういう場所を探していたんですが、どこ行っても鼻つまみものでしてね。仕事も選べず恥ずかしい限りですわ」
笑っていうが、それなりに苦労してきたのだろう。
他の男達も多かれ少なかれ、世間から弾かれた人間のようだ。
「セトさん、彼らにここの場所を使っていただきたいのですがよろしいですか?」
イーゼルが会話の終わりを待って俺に話しかける。
「いいも悪いもそのつもりで整備したんだろ?」
「セトさんなら、そう言ってくれると思ったので」
用意周到とも違う。事後確認でしかないのだが、不思議と許せてしまう。
「好きに使ってくれて構わないが、どのあたりまで使うかは後で教えてくれ」
その言葉に周りの男達が歓声を上げる。
「俺は神を信じてないが、イーゼル嬢は信じてたよ」
ん?罰当たりなこと言ってる奴がいるな。
わからんでもないが、フィーナにぶっ飛ばされないようにな。
「イーゼル?教会側としてあの発言はいいのか?」
「神はそれくらいじゃ怒りませんよ。それに私を信じるなら同じです」
あらやだ、怖い子。
「それで、何を作る気だ」
「遊べる酒場と宿屋ですね」
「具体的には?」
「賭場と娼館宿ですね」
あらやだ、怖い子!
遠巻きにいたボルガもため息をついてるな。
どうやら歓楽街ができるらしい。




