子供達の仕事
工房では子供たちが、せわしなく薪を運んでいる。
ドンケンも数人雇ったらしく、いつもより工房が狭く感じられた。
壁に立てかけられた無数のハルバード。
「威嚇用には、ちょうどいいんだと」
ドンケンが顔を向けないまま言う。
「レンは来てないか」
俺の問いに、ドンケンは顎で外を示した。
覗くと、レンが薪を割っている。
「レン、手伝いか」
【子供たちに教えてます】
レンが割った薪を、子供たちが拾い集め、工房へ運び、棚に積んでいく。
妙に連携が取れているのは、今日が初めてではないからだろう。
しばらく見ていると、レンが子供たちの中でも背の高い少年に、斧を渡した。
最初の薪が割れた瞬間、少年の顔がぱっと綻ぶ。
レンもまた、満足そうにそれを見ていた。
「ご飯だぞー」
フェルが大量のパンとスープを運んでくると、子供たちが一斉に群がる。
工房の中にいた子供たちも、ぞろぞろと外へ出てくる。
少し遅れて、ドンケンも顔を出した。
「レンが、子供たちの面倒を見てくれて助かってる」
「使えそうか?」
「何人かはな。まあ、向き不向きはある」
一人の少女が、食事もそこそこに細い薪を集めている。
「あの娘は、昔のお前に似てる」
そう言われても、外見はまるで違う。
「外見じゃない」
ドンケンは、腰に下げた小さな斧を見せた。まっすぐではなく、わずかに湾曲した持ち手。手に馴染みそうな形だ。
「この持ち手、あいつが加工した。今も、使えそうなのを探してるんだろう」
「薪用じゃ、当たりを探すまで大変そうだな」
「だが、今あるもので工夫してる。お前も、そうしてきた」
見ると、ドンケンは酒を煽っていた。
「まだ仕事じゃないのか」
「ばか言え。これくらい、汗で全部出ちまうわ」
そう言いながら、ドンケンはまた飲み始める。
「フェルにビロードの製法を見てこいって話があったろ」
ドンケンが少女を指差し
「あいつもその一団に加えてやったらどうだ」
「良いのか?自分で育てなくて」
「この街の新しい産業を作るなら若い奴の方がいい。それに」
「それに?」
「フェルに工房持たせるなら、相方が必要になる」
その言葉にフェル振り向く。
「私の工房?」
フェルが押し黙るのを見て、ドンケンは何も言わず工房へ戻っていった。
フェルは、ほんの少し目を潤ませると、何事もなかったように子供たちの相手へ戻る。
まあ、嬉しいよな。腕を認められたってことだ。
俺が認められた時は泣くより先に、飛び上がって喜んでたけどな。
職人街は、まだまだ拡大しそうだ。
「ちょっと北の方を見てくるけど、レンはどうする」
【私も行きます】
レンは子供たちに手を振った。
フェルは、俺の手にパンを握らせて笑っている。
南側には職人街、市場、闘技場、そして住宅が並ぶ。
さらに南は畑だ。
砦の裏は少し暗い。
だが、その方が都合のいい連中もいる。
イーゼルが言っていた。歓楽街。
まあ、娯楽も必要だ。
その用地を決めるため、俺はレンと歩き出した。




