祭りの後
実験的にバトルシーンを飛ばしました。話数がずれたわけでは無いです。
カッツェVSフィーナの一戦は、
語り草になっていた。
結果はドロー。
だが、その内容は――
建国祭が終わった後も酒屋で激論を呼び、
路上で殴り合いまで発展する始末。
夜が明けた今でも、街中で熱く語られている。
そんな熱を、魔王城のバルコニーからでも感じ取れた。
そして寝室では、昼過ぎまで眠っていたフィーナが目を覚ます。
「いやー、勝ちきれませんでした」
フィーナは腫れた顔のまま、笑う。
「まずな。開始するまでメガネをつけたままなのはダメだろ」
「面目ないです」
昨日までの熱狂が嘘のように、
闘技場だけが、静まり返っている。
だが街中には人が行き交い、
さらに街を広げようとする賑わいが満ちていた。
「熱も出てるんだから、寝てろよ」
「いえ、これを見たかったんですよ」
フィーナは街の様子を眺め、目を細める。
メガネは、割れたままだ。
「それに、昨日のレンさんじゃないですけど」
少しだけ言葉を選ぶようにして、
「悔しくて……寝ていられないのもあります」
「まぁ、いいけどな」
俺は小さく息をつく。
「人前には出るなよ。心配かけるだけだ」
その言葉に従ったのか、
フィーナは素直にベッドへ戻った。
「……そうします」
部屋は、少し静かになった。
……またメガネをかけたまま横になってるな。
外してやろうと手を伸ばした瞬間、ベッドに引き込まれる。
「おい、寝とけ」
「うふふ。良いではないか、良いではないか」
力強い腕に、俺は抗えない。
だがフィーナも本気ではない。
ただ、戯れたいだけだ。
「それで?」
俺とフィーナは、天井を見つめたまま話を続ける。
「マグナス様から聞いていると思いますが、孤児院の件です」
「ああ、頼まれたな」
横を見ると、フィーナはまだ天井を見つめて考え込んでいる。
「ノアに行きませんか?」
「いや、俺、立ち入り禁止だよ」
「手荷物扱いで」
「なんのだよ!」
「マグナス様の衣装ケースにですね」
おっさんの加齢臭に紛れて侵入するのは、さすがにエグすぎる。
拒否したいけどな。
したいけどなぁ。
フィーナの目を見ると、悪ふざけじゃないのがわかる。
「わかった」
フィーナが俺の手を取り、笑った。
「だが、別の侵入方法も考えたいな」
俺にもノアに用がある。
ガイナスに会うためだ。
「考えながら寝ますよ」
フィーナの足が絡む。
「ばか、そんな体調でもないだろ」
それでも、ベッドから出ない俺の意思は
弱い。
◇◇◆
「それは、なかなか危険な賭けだね」
セラが、はっきりと難色を示す。
俺が不在になる話だ。相談しないわけにもいかない。
「まずね、セト君が死ぬ可能性が跳ね上がるんだよ」
「そこまで、か?」
セラは小さくため息をついた。
「宣戦布告されている相手のところへ、敵国の王様が、のこのこ出向く。殺されるでしょ」
……もっともだ。
「アレクの面子を潰すから、私には手を出せない。フィーナも同様ね。マグナスの聖撃の存在を、無碍にはできない。でもね、他は違うの」
「……入った時点で、危険か」
「少なくとも、自分の身を守れる力がなければ無理」
「アレクの護衛は?」
「あなた、ミリアに嫌われてるでしょ。彼女がつくわよ」
……うむ、八方塞がりだ。
「まぁ、それで諦めるセト君じゃないから、一応アレクには相談するわよ」
「潜入する方向は?」
「あなた、それやったら本当に死ぬからね」
ルナもリザも心配そうに見ている。
「わかった。無理はしない」
「十分無理なんだけどね、何しに行くの」
「孤児院の件と、ガイナスと話すためだな」
セラが、もう一度深くため息をつく。
「孤児院はともかく……ガイナスは、誰かの報告だけじゃ、あなたは絶対に納得しないわよね」
「わかった。もう一人協力者をつけましょう」
後日呼ばれた協力者は、アヤネだった。




