前夜祭
夜の闘技場に、巨大な火柱が上がる。
火事で被害を受けた者にとっては不謹慎かもしれないが
楽しい思い出で、上書きさせてもらおう。
白いドレスに赤い炎の刺繍、闘技場の真ん中でアッシュが舞う。
踊りに合わせるように赤と黄色、そして青い炎が、夜空に舞った。
そこに闘技場の入場門が開く。
式典用の衣装を身に纏ったリザとモウラが先頭を歩く。
「今宵お集まりの紳士淑女の皆様!
建国祭、その前夜祭!
踊れ! 歌え! 呑め!」
派手な衣装に身を包んだモウラが、民衆を煽る。
筋肉信者たちが、それに応えるように激しく踊り出す。
……うーん。
モウラのビキニアーマーは、やはり良い。
その後ろのビキニアーマー隊も、実に良い。
その後ろに続く櫓。
筋肉信者と冒険者たちが半裸で担ぐ櫓の上には、
フンドシ姿のマグナスとフィーナ。
いや、フィーナは胸をサラシで巻いているが――
なんというか。
尻、が。
……うん、フンドシすごい。
それで良いのか、聖女様。
マグナスのおっさん尻と、フィーナの健康的な尻が、
櫓の上でぐるぐると回っている。
「国名を――リーベアとする。
まだ小さいが、国を名乗ることを、
聖撃司教フィーナの名において宣言する!」
「「「うぉおおお!」」」
フンドシ姿の野郎どもが、地鳴りのように唸る。
こうして、国名と俺の苗字は《リーベア》に決まった。
セト・リーベア。
リーベア国。
ちなみに、決めきれずにいたら、セラが、
「セト・ヒモでも良いんだよ?」
と、妙に距離を詰めてきた。
そうもいかないので、ようやく決めた次第だ。
はるか西の国で、「自由」だとか「解放」だとか、
そういう意味合いらしい。
「ヒモも採用しましょう」
と、ルナが国旗を作ってくれた。
結び目をモチーフにした、なかなか洒落たデザインだ。
「ヒモは結びつきをイメージする。悪くない。採用」
「じゃあ、名前もヒモで良いじゃないか」
「俺だけならまだしも、セラ・ヒモとか、ルナ・ヒモだぞ?」
……少し考えて、ようやく案がまとまった。
『民衆にも印象付けるため、セレモニーで発表しよう』
そう決まり、宗教トップが宣言することになったのだが――
「フンドシのインパクトが強すぎだろ」
行進が進み、大太鼓の前でカッツェが待ち構える。
一際力強い一打に合わせ、隊列が変化した。
中央に、リザとモウラ。
槍を構え、舞う。
その動きは、ただ美しく
見る者すべてを魅了する。
「リーベア! リーベア!」
筋肉信者たちの叫び。
それに呼応する、カッツェの太鼓。
「一種のトランス状態ですね」
ルナが、相変わらず冷静だ。
「トランスというか……祭りの熱気かな」
火事の一件もあったが、
あれを機に、まとまりはむしろ深まった。
民衆も、踊り手も、すでに一体だ。
リザとモウラの槍が交差し、
夜空を裂くように、大きな火柱が上がる。
「さぁ――楽しむわよ!」
モウラの声が、闘技場いっぱいに響き渡る。
祭りが、始まった。




