職人仲間と立ち位置
「セトは、よく暴走する」
こないだの一件で、職人街からの評価は一気に上がったが、フェルからの評価は、きっちり下がった。
まあ……あれだけ「おっぱい」を連呼していれば、仕方ない。甘んじて、その評価は受けよう。
収穫があったとすれば、ナツメが、なかなか面白い奴だと分かったことだ。
ドンケンは、作ること自体に目がない。オリベは、作りもするが、完成した形を見るのが好き。
俺は「無いなら、自分で作る。面白いものを作りたがる」そういう立ち位置だ。
ナツメは、少し違う。技術と知識が活かされること自体を、喜びにしている。
同じで、違う。
不思議かもしれないが、そんな感覚だ。
家族ではない、こちらは仲間という認識。
三人には、伝わった。
「わかるようで、わかりません」
ルナには、一蹴され。
レンは微笑み、モナは苦笑し、ヴェルは呆れながらも、どこか楽しそうだった。
「鍛える喜びと、見せる喜びですね。わかります」
フィーナだけは、はっきり理解を示した。
「いや、いい仕事したと思うよ」
セラも、そう評価してくれる。
「売れ筋の輸出品が増えると、外貨が稼げるしね」
……ああ、商売目線か。
「セト君のことも、ちゃんと評価してるよ」
そう言って、セラは微笑んだ。
「機械人はね、人と関わるのが難しいの。 でもセト君は、一気に馴染ませた」
「技術提供で、職人達とは元から馴染んでたろ」
「それもそうだけどね。でも、セト君がさらに一歩進めたのは間違いないよ」
騒がしくて、回り道で、無駄も多い。
それでも人が集まり、街が少し前に進んだ。
何より、楽しんだ。
上出来だ。
セラの褒め言葉は、素直に受け取っておくことにした。
◇◇◆
ヴェルは、赤いドレスを花嫁衣装に選んだようだ。
バラのブーケを手に、バルコニーの縁に腰をかけている。
「思ったんだけどさ」
「なんだ?」
「この前のコルセット、すごく出来が良かったじゃない」
「ああ……あれは、悔しかった。でも、素直に凄かった」
悔しがったり、称賛したり。忙しい俺を見て、ヴェルが楽しそうに笑う。
「でね、あれをもう少し薄くしてもらえないかなって」
俺は少し考える。あれは、強度と柔軟性のバランスが絶妙だった。
薄くすれば、手触りが変わる。耐久も落ちる。ほかにも……
無意識に、手がわきわき動いていたらしい。それを見て、ヴェルがまた笑った。
「変な妄想に入ってるところ悪いけど、表面に使うわけじゃないのよ」
「……ん? どういうことだ」
「あれの薄型をベースにして、その上から人工スキンを貼り付けるの」
理解が追いついた。
「レンの完全復活は、まだ先になるでしょ。だから、そのつなぎ」
「いや……それ、十分すぎる」
思わず前のめりになる。
「紙みたいな素材を貼るとか、ハリボテに近いことばかり考えてた。でも、あれを芯にするなら、耐久性は文句なしだ」
「薄くする分、どう影響が出るかは未知数だし、人工スキンがどう作用するかも、やってみないと分からないけど」
……いかん。
気づいた時には、完全に早口になっていた。
ヴェルはそんな俺を見て、満足そうに微笑む。
「その顔、好きなのよね」
「ん? なんか言ったか?」
「別に」
他のことが、もう耳に入らない。まただ。完全に、スイッチが入ってしまったらしい。
「ありがとう、ヴェル。ちょっと相談してくる。 留め金も薄くしたいし、ナツメとドンケンにも話を」
「私のドレスの感想くらい、言っていきなさい!」
「ごめん! また夜に!」
作りたがるアホは、走り出す。




