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耳が四つあるんですが!?

白虎は攻撃をやめた。敗北を受け入れたのか、その場で静かに身を丸める。

セトはどさりと座り込み、レンは胴体部分を向きだしにし、その戦いぶりは、人であれば即死――だが、誰も死ななかった。


傷ついた白虎の傍に膝をつき、セトは応急処置を始める。手を止めず、目だけが鋭く動く。


「……冒険者の攻撃か。骨が見えてる。でも、まだ生きてるな」


レンが小さく微笑む。勝利の安堵と、殺し合いにならなかったことへの満足が、その表情に宿っていた。

――だが、時間がない。戦闘音を聞きつけて、別のパーティが戻ってくるかもしれない。


「担ぐにしても……でかすぎるな」白虎の巨体を前に、セトは腕を組む。


そのとき。

「小さければ、担げるんだ?」

足元から、どこか幼さを残した声が聞こえた。


セトは反射的に答える。「ああ、レンくらいなら問題……」


――はて?今、俺は誰と喋っていた?


ふわり、と背中に重みが乗る。


振り返ると、そこにはレンと同じか、少しだけ幼い姿の少女。

銀白の髪。しっとり濡れた虎の耳。月の光に揺れる、青い瞳。

髪の隙間から覗く、やわらかな耳――あれ、耳が4つ?


「ほら。急ぐんだろ?」


セトの思考が追いつくより先に、レンの視線がその少女を捉えていた。ゆっくりと、しかし確かに――うなずいた。


それは、肯定だった。


家に着くなり、セトは玄関に板を渡し、椅子を斜めに挟み込み、扉の隙間を布で目張りした。

「……セラ、絶対入ってくるからな、あいつ」

レンは黙って見ていた。


さて、状況の整理だ。


ソファには、マントにくるまった少女が横たわっている。

銀髪のロングヘア。湿った毛先が頬に張りついている。

白く透けるような肌。呼吸は規則正しく、眠っている様子。

よく見ると、手当てした包帯がそのままだ。


「……うん、少しゆるいな。これで良し……」


と、締め直したところで、ようやく脳が現実に追いつく。


――いや、良くないよ!?


「なんで白虎が、少女になってんだ!?」


立ち上がった拍子に机を蹴飛ばすセト。

レンが少し心配そうにこちらを見る。


「いや違うレン、お前は悪くない! でもさ、なんかおかしくない!? 俺、幻見てる!?」


その横で――少女が、ふっとまぶたを開けた。

セトの混乱は、まだ序章でしかなかった


挿絵(By みてみん)


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