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獣か骨か

そこには、獣がいた。


森の天蓋に潜むように、大枝の上からこちらを見下ろしていた。


白い体毛。青白い縞。まるで霧のように揺れる。モーナフェルム――青白き幻獣。


その巨体は傷だらけだった。

血を滴らせながらも、目の奥には理性すらない怒りが渦巻いていた。

次の瞬間、その獣は――問答無用で、牙を剥いた。

吠える暇も惜しいとばかりに、白虎は一気に跳びかかってきた。


 重さと速さを兼ね備えた質量――まともに喰らえば、ミンチになる。

セトは反射的に、肩から外した道具袋を前に突き出した。


「ッ――!」


 袋の中身は金属器具と補修用の鉱石、そして粘土とワンド。

決して盾の代用品にはならないが、何もないよりはマシだった。

衝撃が走る。腕が痺れる。吹き飛ばされなかったのが奇跡だった。


 そのまま後ろへ転がるセト。だが、白虎の爪は彼を裂くことはなかった。


 割って入ったのは、レン――最強スケルトンだ。

 

 白い体に、青白い獣の目が向けられる。

レンと白虎――強者同士の対峙。

その瞬間、空気が変わった。


白虎が、一歩、後ずさる。


 怒りと興奮に塗れた目に、わずかな躊躇が浮かぶ。

体格差は歴然。それでも、レンの立ち姿に宿る“何か”が、白虎を怯ませた。


セトは地面に伏せたまま、それを見ていた。

レンは振り向かない。ただじり……じり……と、前に進む。

(……通じてるのか?)


声も発せず、威圧の構えも取らない。

なのに、その白い姿は確かに“強さ”を伝えていた。

レンはショートソードを1本構え、もう1本を逆手に取る。


冒険者の中でも稀少な戦型――龍撃流“竜のアギト”。

それは、上下左右から咬みつく“竜の顎”。

構えた瞬間、空気が変わった。


白虎の爪を片手のショートソードが弾きながら、視界の外からもう1本のショートソードが襲う。

一瞬の攻防。白虎は素早く身を引きながらも、レンの衣服を破る。


セトは違和感を覚えた。

レンなら、問題なくかわせたはずだった。

衣服と人工スキンの重みか。あるいは、それを庇っていたのか。


「半歩、いやあと1歩先でいい。レン」

その言葉は、死地に向かわせる言葉。

それでも、レンはうなずく。


白虎の爪が再びレンの胸元を抉る。

並の冒険者なら、それで終わる一撃――だが、レンは違った。

そのまま横回転しながら、白虎に刃を浴びせる。


しかし、白虎も怯まない。厚い毛皮が刃を鈍らせ、有効打にはならない。

そして――白虎の牙が、レンの脇腹を噛んだ。

おどしなのか、力が加わっていない。両者の動きが一瞬、止まる。


その刹那。

「バキッ」


甲高い音と共に、レンの背に巻かれていたコルセットが裂け飛んだ。

破れた衣服の隙間から覗くのは、血でも肉でもない――

白く光る、精緻な骨。脊椎に沿って、まるで芸術品のような骨格がむき出しになる。


まさしく、それは“スケルトン”そのものだった。

セトは息を呑む。そして白虎もまた、一瞬、動きを止めた。

だが、レンは構わない。

痛みも、ためらいもなく、横に回転する。ショートソードを振りかざし――白虎の鼻先を襲う。

牙で受け止める白虎。

だが、もう一振りの刃が、耳の付け根をくすぐるように滑る。


――まだ、やりますか?


声はない。だが、セトにはそう聞こえた。


タイトル変更をしたり取りやめたりと迷走下しました。失礼しました。

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