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最強スケルトンに恋をした ~嫁達が強すぎて魔王認定されました~  作者: HK技研
最強スケルトン出会い

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月の虎と少女

「モーナフェルム」


その獣の背には風を裂くような長い立て髪がある。


語られるのは伝説では、少女を背に乗せ、森の奥へと消えていくモーナフェルムの姿。


「黄色い毛並みの巨大な獣」人々に月の化身として語られた。


「月の獣は少女を攫い、二度と人の世へは戻さぬ」


そんな民話が、各地に散在している。


今回確認されたのは、白だった。それは夜の森へ声すらあげぬまま消えていった。


その獣を見る前に少女を見たというものもいた。それは伝説が頭にある者の錯覚だったのかも知れない。




「とまぁ、希少中の希少なわけだ」


 セラはいつになく得意げな顔をして、ティーカップを軽く傾ける。ドヤ顔である。


 確かに、モーナフェルムは古くから語り継がれる聖獣だ。


その姿は東の方の虎に似ていると言われる。だが大きさはそれの倍。

目撃されるだけでも珍しいというのに、捕獲例は皆無。


稀に毛が残ると言われるが、それが本物であるかは怪しい。



ましてや、伝説上の存在である白虎ともなれば、もはや神話に近い。


「今回の騒動の上で得た毛なら、その価値は計り知れないよ」

 セラはそう言っていた。


◇◇◆


夜の森で装備を確認しながら見回すが、俺には虫と小動物が動く音が混ざって聞こえる。

レンがあたりを警戒する。このざわめきはレンにどう聞こえているのだろう。


そう、スケルトンのレンは俺の言葉がわかる。つまり耳は聞こえてる。

目も見えている。なら言葉を話してもおかしくないのに、そうもいかないらしい。


骨が肉無しでも、どういうわけか繋がってるしな。スケルトンは不思議だ。


何より、声が聞けないのがもどかしい。


やる気はあるように見える。


足はロングブーツに人工スキンを追加し、太ももを出している冒険者に見える。

我ながらいい仕事をした。


「レン、足の具合はどうだ」


レンは軽い屈伸運動をし、親指を立てる。


「大丈夫そうだな。ならしもせずにごめんな」


レンは不思議そうに見つめてくる。そして微笑む。

少々不安があるが、この笑顔が見れたのはこの依頼のおかげだ。


前金代わりに受け取った人工スキンを顔に補充したおかげで、幾分表情が豊かになった。

前より笑顔が素敵になった。


いや表情がわかるようになった。


さて、できれば危険なく調査で終わらせたい。セラには悪いが、借金はゆっくり返済でいいのだ。


最悪、毛の採取ができなくて、借金が増えてもいい。


明日もあるから頑張りすぎるなとセラも言ってた。死ぬ気で頑張ったら死にましたでは、意味がないのだ。


暗い森を歩く。ダンジョンの外の風景が珍しいのか、レンは楽しげに周囲を見回していた。


事情を知らなければ、ただの駆け出し冒険者の二人が、気ままな夜の探索に出ているようにも見えるだろう。


だが、空気が変わった。


俺にでもわかる。背中に虫が入ったかと思うような違和感


すでにレンはショートソードを抜いている。いつの間に抜いたんだ。

俺より早く違和感を感じていたのかも知れない。



「……感じたか?」


 俺の言葉にレンが動く気配はない。集中してるのか?

彼女の目は森の奥を見つめる。


戦闘の痕。剣ではないのだろう。等間隔に間を開けかなり深く抉られている。

それも何本もある。折れた樹木を跨ぎ俺は傷ついた木を辿る。


討伐は先を越されたかもしれない。

報酬に釣られて来てみたものの、一攫千金の話だ、他の冒険者だって動いているだろう。


できればそうであって欲しい。レン一人で討伐は難しいだろうから。


俺?期待するだけ無駄。



少し気が緩んでいたのかも知れない。


だが彼女は最強スケルトンだ。俺とは別に動き始める。


事態は動き始める。


森のさらに奥で、戦う音が聞こえた。だが、それは唐突に止んだ。


……不自然なほどに。


さらに奥へ逃げたのか、パーティが全滅したのなら叫び声くらいは聞こえる。

討伐したのか?


何が起きている?


俺とレンは、静かにその方向へ足を進める。


さっきよりも大きい木が何本も薙ぎ倒されている。

一本は、地面を抉りながら倒れていた。


折れただけ?いやなんだこれは?


魔法か。火を帯びた痕跡が残る。焦げた木の臭いと、生々しい血の匂いが混ざり合っている。


生々しい戦いの痕跡。だが、当事者も白虎も見当たらない。



ただ樹皮にへばりついた血。


違う、流れ落ちてる?




見上げる。


夜の霧がほんのわずかに揺れた。


そこにいた。


白い毛並みを赤く濡らす巨大な獣。



モーナフェルム


その白虎の目は、既にこちらを捉えていた。


吠えるでも、威嚇するでもなく。


ただ、無言で、静かに殺意だけを放っていた。


俺のベルトをレンが強く引く。尻餅をついてしまったが、レンの機転だろう。


白虎の爪が空を斬る。


レンは素早く前に出る。バックラーを前にだし。様子を伺う。


その行動が不味かったのか、手負の獣に理由などいらないのか。


有無を言わさず突っ込んできた。

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