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魔法少女物語~魔法の××× マジカル○○○~  作者: 庭野 ワニ
破壊兵器JASON-SK 登場
44/54

第9新卒:『お嬢様は薔薇の香り』その2




【黄島クリスティーヌ】




 さて、そこまでは良いものの、ワタクシたちはこの殺人ロボットを一体どう処理すれば良いのでしょうか。無駄に硬い物質で出来ていてまったく破壊できる気がしませんし、とにもかくにも二度と起動しないように、どこかに封印するしかないのですけど。

 困った時は、検索するのが一番と思い、手持ちのスマホで検索をかけてはみたものの、「殺人ロボット 隠滅方法」などと検索したって出てくるわけがありませんわね……(役立たずめが)。

 再度開いた取扱説明書にも一切記述がなく、何遍読み返してもそれらしき説明には巡り合えず、最初から停止自体が想定されていないように感じましたわ。

 ……それにしても、太平洋戦争からずっと存在しているって、保証期間何年ですの。さっさと壊れてくださいまし!




 ――まあ、そういう様々な問題を経て、ワタクシは、学校の裏にある途方もないジャングル――というか、まさしく樹海と呼ぶべき場所まで来ていました。

 単純にこのデカブツを捨てる場所が必要だったのですわ。

 あんまり深く入りすぎて迷子になると何なので、とりあえず浅めにこの樹海に入って殺人ロボットの処遇を考えています。

 とにかく、人目につくとマズいですものね。人に見られたくない作業をするには樹海が一番ですわね。


「――しかし、どうしましょうか」


「とりあえず、こいつは……海に落とすか、ここで穴掘って埋めるか」


「後の事を考えるとどちらも怖いですわね」


「今やるべき事も少し恐ろしいけどな……」


 ええ、何しろ、はっきりとブツが壊れてこの世から消えるのを見ない限りは、ワタクシの胸に安心がやって来る事はありませんわ。

 あーもう、本当に面倒なモノを起動してくれましたわね相羽くんは。野球がしたいなら安全な場所でやっていただかないと。

 そもそも、マッドサイエンス研究所も、こんなモノを制作するなら、しっかりと破壊できるシステムありきで作ってほしいですわよ……。


「先にコンクリートや縄を使って動きを封じてからでないとなぁ」


「再び目を覚ましたら困りますものね……」


「そうそう、二度と動き出さないように慎重に……」


 死体を埋めるような不気味な会話をしている最中ですし、これを他人に聞かれてしまったらどうしようかなどと考えつつも、ワタクシたちはこれの処理に頭を悩ませていました。

 しかし、高校生二名にそのアイディアがすぐに湧くはずがありません。

 やはりコンクリ詰めにして海に捨ててしまうのが、海洋汚染的には最悪でも、人類的には一番ベターなのかもしれませんし……。


「あれ、クリス」


 と、なんだか聞き覚えのある声がしましたわ。

 げっ、と思いつつ、誰やねんと見てみたら、そこにいたのは、驚いた事に夢咲いちご(さすがに名前は覚えましたわ)さんでした。

 しかし、なんでよりにもよって平日の夜、こんな時間に彼女がここにいるのでしょう。

 手に懐中電灯だけ持って、随分と動きやすいラフな半袖半ズボンでいらっしゃるようですが。


「あら。……どうしましたの? 皆さんお揃いで……」


 もっと言うと、今回もまた、後ろにミエさん(※青山未羽)とアヤネさん(※緑川綾香)もいるじゃありませんか。ミエさんだけチャラチャラとアクセサリーをつけたギャル然とした恰好をしていますが、はてさて一体。

 なんだか、だいたいいつもいるメンバーが三人揃ってますわね。

 三人で、何故樹海に来たんでしょう……。


「今日は、クラスの男子が企画したイベントの日だったんだよ。

 この校舎裏の樹海で肝試しする、『樹海肝試し!』っていう……」


「それ企画者は晒し首にした方がいいですわよ」


「そうは言ったって、ここ学校の裏にあるような樹海だよ?

 危ないところはテープで封鎖されてるから大丈夫だって」


 全員、様々な事に対する感覚が麻痺してきましたわね。


「ワタクシもずっと気になってましたが、仮にも地方都市で、学校の裏に樹海がある事がおかしいですわよ」


「うーん……まあ、そりゃなぁ……。

 でも、奥深くに入れば死ぬかもしれないけど、このくらい浅いところなら大丈夫のはずだって……」


「そうですわね。……とはいえ気を付けてくださいまし。

 樹海肝試しはミイラ取りがミイラになりますわよ」


「大丈夫大丈夫。

 なんだかんだ言って、グーグルマップ使えば、樹海にいたって案内してくれるからわりと安全だよ」


 ああ、そうなんですの。

 殺人ロボットの隠滅方法は教えてくれないくせに、樹海からの脱出方法は教えるなんて。

 案外役に立たつ時は役に立つ物ですわね。


 そんな事を考えていたら、ミエさんが声をかけてきました。


「クリス……そんな事よりさ、気になってんだけど、それ何?」


「えっ」


「私には、ズタ袋を被った人間のように見えるのですけど……」


 うーん……ミエさんもアヤネさんも目ざといですわね。ワタクシたちの隠そうとしている殺人ロボットを指さして聞いてます。

 確かにこれは、人の形こそしてますが、人の形をしたバケモノなんですわよねぇ……。しかし、これはまた言い訳の難しい状況ですわね。

 人間を殺して埋めているように見えたかもしれませんが、別に人間を殺しているわけでもなく、しかし、真実を伝えるわけにもいかず……。

 頭を悩ませていると、相羽くんが口を開きましたわ。


「あぁ、バレちゃったか~。実は、俺たち今日の仕掛け人だったんだよね。

 この殺人ロボットの人形で、来た人を驚かせようと思ったんだけど……」


 こやつ、上手くずるく纏めていますわね。

 相変わらず、息を吐くように嘘をついて、それを全く顔に出さないポーカーフェイスと度胸、呆れますわ。

 ただ、様子を窺っていると、どうやらそれで納得している模様。


「ああ、なんだ……ダメじゃん、ちゃんとしないと」


「っていうか、クリスもノリノリで参加してんじゃん!」


「アハハハハハハハハ」


 なんだか三人プラス相羽くんが笑っているようなので、ワタクシも重ねて「おーほっほっほっ」と高笑い。




 ――はてさて。


 昔のアニメならこうして全員笑った時点で、ちゃんちゃんと綺麗にその話は完結ですわ。

 ……とはいえ、我々は樹海の中。ここで完結するわけにはいきません。

 ミエさんが口を開きました。


「――で、二人に訊きたいんだけど、ここどこ?」


「樹海ですわ」


「それはわかってるんだけど……どっち行けば出られんの?」


「あっちが、ワタクシたちの入った入り口ですわ」


「いや、指さしてる方には、果てしない木々の群れが見えるんだけど」


「じゃあ知りませんわ。で、あなたたちは一体どこから来ましたの?」


「えっと……それがさー、コース外れて、ちょっと今よくわからなくなったんだよねー……」


 ……は?

 ミエさんは何を言っておりますの?

 恥ずかしそうに頭を掻いているようですけど、結構生死を分かつギリギリだったんじゃありませんか。よくもまあ呑気な態度でいられたものですわ。


 しかし、まあ、まったく、危なっかしいですわね。

 そういう時の為に、ワタクシたちには武器があるでしょう。お忘れでしょうか?


「皆様にはグーグルマップがあるじゃありませんか」


「それが、回線が悪すぎて繋がらなくて……」


 こう言うアヤネさん。

 少々頼り気味な表情をこちらに見せてますわね。若干ですが、涙がうるうる出そうなものすごく弱弱しい表情。なんか勝った気分ですわ。


「ダメじゃありませんか。さっき大丈夫って言ってたのに」


「実は、唯一回線の強度に自信のあったミウさんのスマホが、

 さきほど猿に取られてしまいまして……」


「猿」


「ええ、それで猿追いかけてきたら迷ってしまったんですよね……」


 さっきから気になってましたが、ここはどんな田舎ですの?

 駅前は妙に発展しているくせに、樹海だの何だのと……。


 というか、そもそも、彼女たちの参加企画の安全管理が酷すぎませんか?

 わざわざ死ににいくようなイベントを催して……そんなの田舎の部族だけでよろしいじゃありませんか。


「クリスさん。できれば出入口まで案内してくれると嬉しいんですけど」


 アヤネさんが言います。

 まあ、何であれ我々と会えたのは幸いという事でしょう。

 我々に合流できなければ、彼女たち三人今頃遭難してお陀仏でしたわ。

 それじゃあ、彼女たち三人を案内する事にいたしましょうか。


「――事情はわかりましたわ、御三方。

 そういう事なら、相羽くん、皆さんとワタクシに来た道を教えてくださいな」


「えっ、黄島が覚えてるんだろ?」


「は?」


「は?」


「は?」


 みんなそれぞれ、「は?」といった表情。

 相羽くんならここまでの道のりを覚えてるはずじゃありませんか? 何しろ、相羽くんの案内でこの樹海に来たのですから。

 ワタクシが、とりあえず、覚えのある方向に指をさします。


「相羽くん、あっちから来たのは覚えてますわよね?」


「いや、あっちだろ?」


「クリス、それさっきと違うところを差してるんだけど」


 それぞれ別の方向から来たと主張している状況ですわ。

 そのうえ、いちごさんに至っては、ワタクシが先ほど指さしたのも違う方向などと言っております。ワタクシは確かに先ほども向こうを差した記憶がありますわ。


 何しろ、見てください、ほら、あの大木。

 あの大木がある方向からワタクシたちは来たんですわよ。あれ? いや、やっぱりあっちの……。


 いや、えっと、もしかするとあっちにあるあの……。

 えっと……。


 ……。

 ……。

 ……。




 あ。

 あー。




 あーーーーー、なるほど、わかりましたわ。

 ええ、なるほど、なるほど、わかりました。全部理解できましたわ、おほほ。




 これはつまり、ワタクシたちは五人纏めて遭難したというわけですわ。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




【黄島クリスティーヌ】




 そういうわけで、この樹海にて遭難し、我々五人で過ごす事になりましたわ。

 いやあ、なんというか、ワタクシから見るといつものメンバーという感じがしますわね。いちごさん、ミエさん、アヤネさんの例の三人に加えて、職場の友人である相羽くんと来て、あと、ついでに機能停止中の殺人ロボット(こいつは相羽くんがロープを使って頑張って引きずってきてくれてますわ)。

 三人と相羽くんとが普段絡んでいるイメージがないだけに、ワタクシの方から見ると、「遂にあの三人と相羽くんが合流したか!」というクロスオーバー感というかコラボレーション感というか、妙な胸の高鳴りがあります。尤も、それは普段それぞれと絡む機会の多いワタクシだけでしょうね。

 おほほほほほほほほ。




 ……さて。

 しばらく鬱蒼とした森の中を不安に駆られながら歩いたところで、目の前に奇妙なモノを見つけて、我々は立ち止まりました。

 ミエさんが震えた様子でアヤネさんに言います。


「ねえ、このトンネル何?」


「これは、たぶん防空壕ですね。

 戦時中に敵の攻撃から避難する為に作られたシェルターのようなものです」


「……こんなところにあったんだな」


 御馴染み三名は、懐中電灯を持っている事もあって先頭を歩いて行ってもらったのですが、その果てに見つけたのは、防空壕なる奇妙なトンネルでした。

 樹海の中にしては人工的に掘り進めたような丸みがあり、洞窟とは一線を画する形をしていますわ。ちなみに、防空壕なるモノの事なら、ワタクシも、金田一少年の事件簿を読んで知っています。

 いやぁ、しかし、この樹海に逃げ込んでいた人間が昔いたんですわね。


「――ちょっと待ってくれよ。

 防空壕があるって事は、ここそんなに外から遠くないんじゃないか?」


 と、相羽くん。

 ミエさんが思案気に腕を組んでいました。


「確かに……。人の暮らしているところから遠い場所に防空壕を作っても意味がないですし。

 もしかすると、確かにこの近くに樹海の出口があるかもしれません」


「しかし、悪戯に歩いても、このまま会えなくなってしまうのではありませんか?」


「それはクリスさんの言う通りですね。ここからだと迂闊に歩くよりは、朝まで留まった方が良さそうです。

 流石にもう暗すぎますし……。友達や家族に連絡を入れられないのは心配ですが……」


 ……まったく、そうですわね。

 夢咲家の皆様も、ワタクシもいちごさんも纏めて帰って来ない事に心配している頃合いじゃないでしょうか。既に、かなり気が重いですわね。

 尤も、状況が状況なので仕方がないとも言えますけど。


「なあ、でも、この防空壕、ちょっと気にならないか?」


 そんな中でそう言ったのは、相羽くんです。

 何が気になるのかはわかりませんけど、とにかく彼は防空壕を気にしてそこへ入って行こうとしているようです。

 いつものトラブルを起こすようなあのキラキラした瞳を見せています。


「ちょっと俺、一回入ってみるわ」


 とかワタクシが嫌な予感を巡らせていたら、その傍から、懐中電灯も持たず、平然とその中へと足を踏み入れていきましたわ……。先も見えないだろうに……。

 もし落とし穴でもあったらどうするんでしょう。


「あっ、野生動物とかがいたら――」


 と、アヤネさんが止めたのもつかの間、相羽くんはすぐに彼方に消えて見えなくなってしまいました。

 ワタクシたち四人は、また顔を見合わせていました。




 それからまた僅かな時間、緊張が走ります……。




 ……なんだか、ちょっと心配になってきましたわね。

 流石にこのままだと、あの相羽くんも危ない目に遭いかねない。


「……相羽くーん!」


 ワタクシは、とりあえず防空壕の暗闇の中に向けて彼の名前を呼びましたわ。

 しかし、返ってくるのはただの果てしない静寂。

 悲鳴もなければ、返事もなく、ワタクシたちの間に緊張が走ります。足音すら消え、なんだか穴の中からは生命観のない状況。

 なかなか帰ってくる事もなく、かと言って、こちらから踏み出す事もできず、ワタクシたちは恐る恐る相羽くんを待ちました。数十秒の出来事なんですが、まるで数分あったかのように感じてしまいましたわ。


「――」


 まさか龍や怪物でも住んでいる洞窟なのか、と思ったところで、ふと、直後にワタクシたちの前で、覗いていた防空壕の中に一斉に電気が灯されました。

 擬音にすると、パッ、という感じですわ。


「えっ!?」


 驚く我々でしたが、それはなんと――奥の方まで続く白い光と、その先にある舗装された床。それは、防空壕の中に電灯が存在していて、電気が通っていたという事でした。


「電気?」


「なんで……?」


 もしや、これは防空壕ではない……?

 さながら、ここが秘密基地であったかのような、到底、防空壕とはいいがたい様相が目の前に広がっていましたわ。

 ぶっちゃけ、防空壕以上に人工的なモノであるのは間違いありません。光の加減が、明らかに昨今のLEDに引けを取らない輝きですもの。


「何……ここ……」


 いちごさんは、いま目の前で起きた光景を見て、唖然としていますわ。

 他の二名の付き人も、それぞれ、この場所の不気味さに驚いているようですわ。


「何かの施設でしょうか?」


「でも、一体何の……?」


「自衛隊の通信基地とか……」


 ワタクシたち四人は、またも顔を見合わせましたが、次の行動はワタクシの一歩で決まりました。見えるならば、先に少し進んでみるが良いじゃありませんか。

 白く光る防空壕に、ワタクシも一歩。あの殺人ロボットは置いていきます。

 ワタクシは進むべきと考えました。


「……ちょっと、クリス!」


「安心してくださいまし、いちごさん。

 相羽くんが先にいる以上、安心ですわ」


「でも、ここが一体何なのか、わかる?」


「わかりませんわ。

 しかし、森に寝るよりも、電気のある人工的な場所で寝る方が落ち着くでしょう?」


 言うと、三人とも何だか腑に落ちないような顔をしてますわね。理に適っていると思うのですけど。


 ……それに、相羽くんもこの先にいるかもしれませんわ。

 彼を放っておくわけにもいきませんし、電気がついた事そのものが、相羽くんがワタクシたちを誘導しているという事に他ならないような気がします。


 ここが何かの人工的施設であるのは明白。

 果たしてそれが、行くべき場所なのか田舎をワタクシたちはそれぞれ見定める必要があるはず……。

 そして、ワタクシに続いて、三人が見定めてこの奇妙な基地へと踏み込んでいく事になりました。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆


別所で別の物書いてて更新が遅れましたが、この回の2話目です。

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