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魔法少女物語~魔法の××× マジカル○○○~  作者: 庭野 ワニ
キャプテン・コバルトマリン 登場
31/54

第6新卒:『大変!ママが女番長!』その4




【夢咲いちご】




 ――翌日、アタシが学校に帰ってきて最初にしたのは、委員長の席に行って頭を下げる事だった。

 元気そうに現れたアタシに驚いている様子で、むくれるわけでもなく委員長はじっとこちらを見ている。

 ミウはまだ来ていないので、まずは委員長にだ。


「――ごめんっ! 委員長」


 アタシは、即座にこう告げた。

 お互い、どこか丸く収まるのを予感していたというか、委員長の表情には、うっすらと快い歓迎の色さえあった。

 しかし、アタシは許されようという気持ちよりも、まずは誠意を込めて頭を下げるだけだ。


「昨日のアタシ、やっぱり間違ってたよ。

 アタシは、嫌な自分を脱して、憧れに近づいて、

 二人を支える為に、二人の隣にいたはずだったんだ。

 だからアタシたちは、三人なんだって、その事を忘れてた……。

 アタシのいない三人を目の前で見て

 ――そっちの方がいいかもって思って……

 それから凄く大事な事を忘れてしまってたんだ」


 このクラスのみんなにバレないように、持って回った言い回しになったが、それでも委員長にはしっかり伝わっただろう。


 ……と、そんなアタシたちにシャッターが向き、突然パシャパシャとフラッシュの光が炊かれる。そこには三人くらいのカメラ小僧集団がいた。

 誰だろう、この人たちは。


「……あんたたち、一体?」


「僕たちは、この学園の『ゆりいろ写真研究会』です。

 学内で発生した女の子同士の仲直りの瞬間を

 撮影して展示する『女の子仲直り写真展示会』を企画してまして、

 いま、お二人には、その被写体に……」


「後にして」


「はい」


 そう言って、素直に教室を去っていくゆりいろ写真研究会の人。彼らのような生徒は、どこから出てどこへ消えてゆくのか。

 なんだかわからないけど、とにかく、こういう連中に協力するのは後にしよう。

 こっちは真剣に委員長と話しているのだ。

 彼女は今の謎のカメラ小僧集団を気にもせず、言った。


「……番長さん、わかってます。私も言い過ぎました、ごめんなさい」


「そんな事ないって……」


「いえ。番長さんがしょげるのも無理はなかったと思います。

 ……振り返ると、私だって、昨日、番長さんより強い番長が現れて、

 間違いなくどこかで安心していたから。

 ――だから、そんな私の心を、あなたが察したんじゃないでしょうか」


 ……。


「――確かに私たちにとって大事なのは、

 『強い事』だけじゃないはずです。

 ……だけど、正直、それに気づいたのは、

 全部終わって、自分の安全が保障されていたからの話だったと思います。

 負けそうで余裕がない時、私は助けてくれたのが誰かなんて、考えてもいなかった」


「――」


「たぶん、誰かを慰めたり、叱ったり……

 そんなの、自分の心に余裕があるからできる事なんだって、思います。

 そう思ったから、ごめんなさい」


「ああ」


 ……そうか。

 委員長は委員長で、そんな事を考えていたのか。

 考えすぎな気もするけど……でも、彼女なりにアタシだけのせいにせずに考えてくれたという事だ。

 アタシは頷いた。


「ただ、ここまで私が言った事も事実だけど、

 あなたにも非はあります。

 だから、客観的に見て、今回は、全員おあいこで、どうでしょう?」


「ああ、喧嘩フラグはチャラ、って事だな」


「ええ。誰が悪いとか、誰が正しいとか、

 そんなの決めたら、三人である意味がないじゃないですか。

 三人全員、あいこが一番です」


 決して自分だけを責めないのも、ちゃんと委員長だ。

 あくまでこうしたトラブルの際、問題を全員で分け合う事を提示する。


 毎回悩んだり喧嘩したりしていても、仕方ない。

 時にはきっぱりと双方非を認めて、関係を取り戻そう。

 どっちも悪い、どっちも悪くない。全員が傷を負う。全員で正しくなる。

 それが、アタシたちのベターだ。誰かが傷ついた時に支えるっていうのは、そういう事なのだ……。


「でも――」


 アタシはミウの席を見る。

 よりによって、今日この日、ミウはサボった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




【青山未羽】



 ……一方、その頃、ウチ。


 ウチは、学校に「青山未羽、風邪、欠席、げほげほ、よろしく」とだけ電話して、番長ハウスにやって来ていた。

 風邪だからカタコトの日本語しか使えないっていう設定で電話したんだけど、上手く行ったかな。

 ただ、そうまでして、ウチは番長ハウスに来たんだけど――。


「えっ! 番長いないの!」


「ええ。……まあ、いま学校行ってるから」


 困り顔の番長ママが、玄関にはいた。

 どうやら、ウチと番長とは入れ違いになったみたい。

 なーんだ、やっちゃったなー。


「……そうですか」


「そもそも、ミウちゃんも今日学校は? だって同じクラスでしょう?」


「ウチは自主自習です」


「自主自習ってなんだか随分語呂が悪いわねぇ……」


「だって自習は自主学習の略ですもん。

 だから、ウチが言ったのは自主自主学習になっちゃうし」


「いや、自習は別に自主学習の略じゃないわよ」


「えっ、そうなの」


 間違えたみたい。恥ずかしい。


「でも、他所よその子にこんな事言うのも何だけど、

 たぶん学校は行った方がいいわよ」


「いやほら、昨日あんな事あったから気まずいですし、

 番長もどうせ、同じ事考えて休んでるとばっかり……

 だから、直接話しに来たんですけど」


「うーん……あんまりそのくらいの事で休む人いないんじゃないかしら……」


 えっ、普通このくらいの事じゃ学校休まないの?

 ……と思ったけど、欠席しすぎて怒られるのって中学の頃でもウチくらいのもんだった。


 要するに、番長はやっぱり、結構そういうところ真面目な子なんだ。

 ウチなら行きたくなかったらサボったり遅刻したりも結構ある。そういう時は普段見られないがんこちゃんとかを見てるんだけど。――あっ、でも今学期これで初めてだ。今年まだ、がんこちゃん見てない。


「まあ、折角来たんだから上がっていく?

 どうせならとことんサボリに協力するわよ」


「……あ、じゃあ、ちょっとお邪魔します」


 どうぞと言われて、番長ハウスにお邪魔する事にした。

 普通の二階建てだけど、ちょっと新築って感じの家。新しいけど、ちょっと狭い感じもする。

 ウチみたいに結構長くこの街に住んでて結構大きな敷地がある家もあるけど、番長の家はちょっと違うみたい。


「へぇ~」


 ウチは、リビングに向けて歩いていく。

 思ったより普通の家。……なんか、てっきり家中に昭和のアイドルのポスターとか貼ってあるイメージあったけど、別にそんな事もない。

 ほんとフツーって感じ。

 リビングもテレビがあってテーブルがあって椅子があって……それくらい。なんか、昔の物とかがいっぱい置いてある家ってワケでもないんだ。

 番長ママが冷蔵庫を開けながらウチに聞く。


「――ねえ、あったかい飲み物と冷たい飲み物、どっちが良いかしら?」


「あ、いいですよ、別に」


「何か飲んでもらえると助かるわ。

 ……冷蔵庫も戸棚も、クリスちゃんが買って来る飲み物でパンクしそうだから」


「……それなら、冷たいので」


「ドクターペッパーか、マックスコーヒーか、がぶ飲みメロンソーダがあるけど、どれが良いかしら?」


 ……なんか、ここの冷蔵庫、いばらぎとかにあるめっちゃ安い自販機みたいなラインナップ。


「『いばらぎ』じゃなくて『いばらき』よ、ミウちゃん」


 何も言ってないのに、ちゃんと突っ込まれた。

 もしかして口から漏れてた……?




 とりあえず、ウチはマックスコーヒーを頂いた。

 なんか、クリスは色んな飲み物を箱でいっぱい買って来るらしい。しかも変な物ばかり。この中だと、たぶんマックスコーヒーが一番おいしいと思う。

 ウチはコップに注がれたマックスコーヒーを飲む。

 甘い。ものすごく甘い。


 それから、ゆっくりと口を開けた。


「えっと……昨日の事、すみません。

 なんか、ウチ……私も、色々迷ってて」


「そんなのわかってるわよもう。

 わたしが大人げなく調子乗ったのもいけないし……」


「でも、ちょー強かったのは事実ですし……」


 ……うん。だって、ウチらもいらないじゃんあれ。

 番長はずっと、「自分だけいらない」って言ってたけど、ウチらにも正直、同じ悩みが絶対あったと思う。

 ウチも笑ってはいたし、安心してもいたけど、なんだか使命感とかこれまでの戦いとか、全部いらなかったのかなって思っちゃった。

 勝てたは勝てたけど、全部、番長ママのお陰じゃん。


「……だから、番長だけ悩んでるフリって、なんかちょっとズルいと思うんです」


 こんな言葉が思わず漏れたのが、今度はちゃんとわかった。

 ウチも何もしてないし、委員長だって何もしてない。時間を稼いだだけ。


 ……だから、ウチはちょっと思ったんだよね。

 それならそれで、三人で「オチコボレ」になればいいし、一人が悩んでるならウチらも悩めばいい。だって、その為に三人いるって前に言ったし。

 そう思ったから、ウチはここに来た。


「……やっぱり、ウチらじゃ、絶対勝てなかったし。

 多分、委員長もそう思ってると思うし。

 ――でも、だから、お互い励まし合って、また強くなって、

 みんなで一緒に取り戻しちゃえばいいのに。

 一人だけ弱くなって退いてくつもりって、

 それ一番ズルいって、思っちゃいました。

 ウチら、三人なのに……。それが一番許せなかったな」


「そうね……あの子には昔から、

 やや周囲を信頼せず、内向的で人を突き放し、

 殻に閉じこもったうえ、心配すれば更に突き放して

 被害者になりたがるという厄介な性格的傾向があるわ」


「しかも、マジカル女番長辞めるのがいいって、

 あれ絶対思ってないし。

 ……やりたいけど、なれなくなったからああ言ってるだけ。

 ああいうの好きだって言ってたし、

 魔法の力でも本当にそうなれて、

 そこに追いつきたいって、みんなの前で言ってて――」


「自分に嘘をついて現実逃避する性格的傾向も確かにあるわね……」


 さすが、ママだけあって番長の事をよく知ってる。

 自分に嘘ついて、現実逃避……その気持ち、ウチにもちょっとはわかる。


 ただ、番長の場合、嘘をもうつかないって決めて、ウチらの前で宣言して、それからマジカル女番長になったから、ちょっと、ああいう態度にはちょっとイラッとした。

 ウチが思う女番長と、番長の思う女番長って違うかもしれないけど、少なくとも、あの時の番長は凄くダサい。

 自分をごまかすために言い訳したり、嘘ついたり。


「――」


 そんな事を思ってたら、番長ママが突然口を開いた。

 凄く、なんだか――一度何かに気づいてはっとしたような顔をした後で、申し訳なさそうな目で、ウチに言う。


「――……でも。ねえ、ミウちゃん。

 あの子はね、色々至らないところはあるけど、

 絶対に誰にも負けないはずのところが、間違いなく一つだけあると思うの」


「え?」


 なんだろう、この人が言うなら、間違いないような気がする。


「前に、あの綾香ちゃんっていう子が敵に狙われて毒を受けた時……あったでしょう?」


「ええ」


「あの時ね、わたしはいちごちゃんに戦いをやめる事を提案したの」


「えっ……」


「――そう、言ってなかったけど、

 それがわたしのあの時、促した選択だったのよ。

 今は綾香ちゃんに悪いと思ってるけど、

 他の誰かの為に、娘がそんな――気が気でいられなかったから」


「……」


「その時より前だって、

 いちごちゃんが戦いをやってると聞いて、

 止めようとしてきたわ。親の目から見て、危なかったから」


 そっか、番長ママは、委員長を見捨ててたかもしれないんだ。

 ……勿論、気持ちはわかる。仕方ないと思う。

 でも、もしこの人が本気で番長を止めたり、あるいは番長がこの人の言う事を聞いてしまっていたりしたら――委員長は。

 ……ただ、そうはならなかった。


「――だけど、そういう時、あの子は必ず抗った。

 誰に何を言われても、友達を絶対に見捨てたくないからって。

 その気持ちだけは、きっと、絶対に誰にも負けない……

 なろうとしている自分に追いついて――いや、追い越しているところだと思ってるわ」


「……そうかもしれない。なんとなく、ウチもそう思います」


「そうよ。

 だからよ、だから、いちごちゃんは、

 弱い自分が戦士でいるよりも、

 もっと強い人が戦士として二人の隣にいれば、

 それが一番良いって思ってたのよ。

 ――きっとどこかでそう思っていたんじゃないかしら」


 ……そうじゃん。


 言われてみれば、そうかもしれないよ。

 番長は今回、「地球の為にこれが一番いい」っては言ってたけど、番長は前に――前に地球を売ろうとしてるんだよ。

 番長にとっての一番って、いつも地球の事じゃないじゃん。




「――番長は、地球や自分の事より、

 何より仲間(ウチら)だって……いつもマジで、ナチュラルにそう思ってるんだ……」




 それでウチらあの時、喧嘩になったんじゃん。

 番長の事だから、地球の事を最優先に考えるっていう以上に――ウチらが負ける事が辛いんだ。


 女番長らしくなりたいって言ってるし、それにしては色々とダメなところも多い。

 だけど、「友達を大事にする」っていう一点だけは、ずっと……この世界のどんな番長よりも番長らしい。

 世界より、地球より、ずっと大事なモノが友達だって、番長はずっとそう思ってるから。

 だから、あんな風に、「身を引く」みたいにして、自分だけ戦いをやめようとしたりできるんじゃん。


 だから、『三人で』じゃなくて、『二人の為に一人で』……そうだった、そうだったのかもしれない……!


 そうだよ、番長なりの筋だとか、義理だとか、そういうのがあの言葉だったんだ。

 間違っては、いない。


 でも――ウチの思う「三人で」だって、きっと間違ってはないんだ。 

 だったら、ウチは番長をわかってから、それを教えればいい。


 力がなくたって、弱くたって、最初に選ばれたウチらは、ただ一緒にいる友達って事だって良いと思う。

 ヒクツで、ちょっと嫉妬深いところのある番長だから、自分でも気づいてなかったりするのかもしれないけど。

 優しい番長を認めて、ウチらの想いも知らせればいい。

 間違ってない同士だから、必ずどっかにお互いの想いがちゃんとあって、お互いをもっとわかってから話せば、すぐに済むかもしれない。

 でも、きっと、その事も三人、それぞれ……だんだんわかり始めてる!


 ピロロロン。


 と、その時、誰かのLINEの通知音。

 ん?


 ウチのかと思ったら、なんと番長ママのだ。

 番長ママは、のんびりそれを取ったんだけど、通知内容を見て焦っている。


「――えっ!? 学校に極悪帝国!?」


 ……極悪帝国速報。

 今まで色んなところにやってきてた極悪帝国は、今回、遂に学校にやって来た。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆


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