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魔法少女物語~魔法の××× マジカル○○○~  作者: 庭野 ワニ
非情の殺し屋クロック・ボーガン 登場
18/54

第3新卒:『もう、何も…』その4(終)




【緑川綾香 ―― ハッピーエンド】




 私たちは、勝利しました。

 隣には、大切な仲間が……友達が立っている。

 私たちは、ばらばらでも、確かに一つになった。

 これって、凄く奇跡的で、素敵な事でしょう? そうでしょう? そうですよね? ええ、そうです。そうなんです。そうじゃないと思っていても、そうだと思い込んでください。でなければ、あなたは極悪帝国だとみなします。


 さて、戦いも終わった事ですし、我々は一時の休息というところです。

 いつもの如く、夕暮れの土手を歩いていました。ここを歩いていなかったら、私たちは一応クラスメイトでも、小さな接点こそあっても、大した友人じゃなかったのでしょう。

 ちなみにですが、今回は別に最終回ではありません。一区切りという程度です。まだ一応、伏線も残っている事ですし、私たちはまだまだやりたい事があります。


「――今度さ、三人でどっか行かない? ねっ!」


「それ、アタシも言おうと思ってた」


「私もです」


 そう。それに、バラバラでも、こうしてたまに一つになる……。


「……希望はある?」


「私は、竹久夢二美術館を希望したのですが」


「えー、渋谷が良い」


「ギャルなら『ランド』とかでいいんじゃないか……? 同じ千葉県だし」


「描写できないじゃないですか」


「うん。それたぶん、画面に見えないところで行ってるしかないよね」


「他も結構ギリギリな気はするけど……」


 やっぱりバラバラでした。


「うーん……」


 何か、ワニワニンさんはそんな隣で唸っています。

 何かあったんでしょうか?


「ワニワニンさん……どうしたんですか?」


「ファントムお嬢様……彼女はぼくの事を知っていた。一体、なぜ……」


 それは、まあ……前後のやり取りや、これまでの伏線で察しが良ければなんとなくわかる気もするのですが……物語上の我々は全員、気づいていないという事で。

 今回は、まだまだ引き継ぐ事もありますし。

 わかりやすい伏線でも、その時まで引っ張らないとつまらないでしょう。

 ……あ、それより、伏線で思い出しましたが、忘れていた事がありました。


「そうだ、ワニワニンさんといえば、ミウさん。これ」


 そうです、私は手芸店で何かを買っていたという話でしたね。

 忘れているかもしれませんが、前回の戦いの前後で手芸店の閉店セールに赴いていて、そこで買い物をしていたのです。

 何より、そこで買った品物で、あの後もしばらくちょっとした工作をしていたんですね。


「――渡しそびれてました。

 幼稚園の先生を追うと言ってたので……その時に作ったミウさん宛てのマペットです」


 そうです……危うく、本当に渡しそびれてしまうところでした。

 ……本当に。

 いま、生きているから良いのですけれど、これを渡しそびれたら、この一週間の私の苦労も水の泡です。

 私は、ワニワニンの形のマペットを、家に帰ってからずっと作っていたのです。


「マジ? 超嬉しい! ありがと!

 今度子供たちの前で使うね! 喜ぶだろうな~」


「私もミウさんが喜んでくれて嬉しい……」


 私は、そう告げました。


「ミウにはあるのに、アタシにはないのか?」


「ふふ。私たちは、『三人』ですからね。

 ――とは言っても、こちら、余った糸で編んだメリケンサックなんですが……お気に召すか……」


「それはメリケンサックっていうか、手袋では……?

 ――うん、でも、その方がいいや。実用性もあるし、冬になったら使うよ」


 いまは春ですから、冬って凄く遠いのですけど……。

 ――なんというか、余り物とはいえ、すっかり、渡すタイミングを間違えてしまったみたいですね。


「アタシも今度、ミウと委員長に何か用意するよ!」


「ウチもウチも~~~……って、大したもん用意できないかもしんないけど!」


「そうだ、ワニワニンさんには今回用意できず……申し訳ありません」


「あー、いいよいいよ。

 女の子同士の関係に男のぼくが立ち入るほど無粋な事もないし。

 ぼくの世界の法律では、女の子同士の関係に男が介入すると懲役ちょうえきかかるからね。

 見守りつつ、気持ちだけもらっておくね」


 私たちは、これにて、第一話の終わりごろに私が思った通り、三人一つになりました。

 しつこいようですけど。




 とにかく、これからも喧嘩はするし、ぶつかるし、バラバラなところもあるかもしれませんが――私にとって、二人は、最高の親友です。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




【極悪帝国・地球侵略軍『竜巻』 ―― 次回への引き】




「――ファントムお嬢様。今回の始末はどうつけるつもりです?

 殺し屋を雇ったなどと知れたら、

 我々極悪帝国の正義が揺らぎ、あらゆるところからバッシングが……」


「ええ。まったくですよ。

 今回はなんとか、うまくもみ消す事には成功しましたが……

 これじゃあ、地球人を捕虜にした時に帝国内外にバレちまいますよ」


 こちらでは、ファントムお嬢様の行動への非難が集中している。部下さえもこの上司には苦言を呈しているらしい。

 彼女の独断の「卑怯」は、誇りある極悪帝国にとって、批判の槍玉に上がって然るべき行いであった。殺し屋を雇い、人質を取ってまで地球を手に入れようとした事が発覚すれば、ここにいる『竜巻』部隊は全員、降格と減給になりかねない。


 それゆえに、すべての問題をこの『竜巻』のごくごく一部のメンバーだけで揉み消し、かなりギリギリのところで漏洩を防いだのだ。


 しかし、この場合、万が一地球を侵略しても、今後の捕虜の教育難度は激増する事も想像に難くないし、歴史修正は骨が折れる事だろうと思えた。

 地球侵略という行為そのものが各段に難しくなったうえ、モチベーションも激減する。これから地球を侵略する行為もまだまだ損にはならないが、万が一、極悪帝国にとって損失が出る侵略ならば、すぐに撤退するほかない。


 こういった不祥事は、デリケートな問題を生む。

 だが、当の事態を引き起こしたファントムお嬢様は、相変わらずの高笑いで、全く気にしていない素振りであった。


「おーーーっほっほっほっほっ!!

 ごめんあそばせ、格下の皆さまっ!!!

 今回の事で苦労おかけしましたから、

 先ほど総務に申請した長期休暇で、

 このワタクシ自らが落とし前をつけてみせますわっ!!」


「え?」


「――ワタクシの休暇中の小隊長の派遣はすべて、

 呪武者ヒラギィ、あなたの方で行ってください。

 ワタクシは、彼女たちの世界で少々遊んできます」


 ただ遊びに行くのでないくらい、この場にいる全員が察知できた。

 この侵略の為に手段を厭わない女傑が、これから一体、どんな野望や策略を胸に秘めているのかは想像にも及ばないが、少なくとも地球侵略の為に悪虐に走ろうというのだけは誰にでも想像しえた。

 ファントムお嬢様は、続けた。


「……何故彼女たちは今回のような力を発現できたのか、

 魔法マジカルがあそこまでの力を生み出すその理由は何か、

 過去の魔法少女マジカリストとの大きな違いは何なのか。

 その答えはただひとぉつ……君がぁ……世界で初めてぇ……じゃなかった、

 ――その原因を探る為に、ワタクシは一度地球で過ごしてまいりますわ。

 掴んだ情報はすべて、後で報告させて頂きます」


「だが、一体……奴らの正体もわからないというのに!」


「はぁ……。だからアナタは呪武者なのですわっ!!

 そんなもの、この発信機ですぐに特定しまえますもの……」


 そう言いながら、ファントムお嬢様はスマホのような機器を取り出す。

 その画面を見せると、三つの光が地球の日本の上に点滅しているのがわかった。

 呪武者ヒラギィは、その画面を思わず顰め面で見て、この女が先ほどの出撃でちゃっかりと三人の行動を把握できる工作をしていた事を知る。

 しかし、それは彼にとって、おぞましい想像にもつながった。


「発信機だと!? まさか、貴様……地球に行った時に三人に!!」


「ええ。これを取り付け、生活圏内やパターンをすべて確認できるようにしましたわ」


「無粋だっ! 奴ら三人の居住地を狙い、変身前を殺すのか!?

 敵であればプライバシーを侵害してもいいというのか!?

 力と力、正々堂々の戦いをしないというのなら、

 もはや地球の侵略に価値などない!!

 これ以上勝手にふるまうならば、この私にも考えがある!!」


 怒りをあらわにする呪武者ヒラギィ。

 ふぅ、とファントムお嬢様はため息を吐き出した。


「――早とちりなさらないでくださいませ。

 あくまでワタクシは、彼女たちの発した、

 今回のあの力の正体が知りたいだけ……

 エンジェル委員長、あの膨大な魔法値を、一体何が実現したのか……。

 今回のようなマネは、また気が向いたらにいたしましょう」


「そもそも、貴様、休暇を取ったんじゃないのか……

 何故、そうまでして働く。

 地球侵略は大切な任務だが、休みの日はちゃんと休め。それも俺たちの仕事だ……」


「ふふふ。ワタクシは、誰に何と言われようとも休むつもりなどございません。

 ワタクシは、他人にも厳しいですが、自分にもどこまでも厳しいのですわ……。

 それに、前職でのワタクシには、決して休み時などありませんでしたし、

 このくらい働いたほうがワタクシには丁度いい……」


「――」


「さて、彼女たちは、おそらく中学生から高校生程度の少女……

 おそらく学校に通っているクラスメイト同士というところでしょう!

 彼女たちに友人として接触し、

 彼女たちの生活や行動からすべてパターンを推測すれば話は早い!」


「待て、マジカルお嬢!

  貴様、なぜ奴らについてそんな事まで……

 貴様、まさか過去にも魔法少女マジカリストについて調査して――」


「ふふふ。女の過去を訊くなど、無粋ですわ!

 だからあなたはモテないのですわ!」


 何か知ったような笑みで、彼女は呪武者ヒラギィに言う。

 お嬢様育ちを自称するが、それ以外の事は何もわかっていないファントムお嬢様の過去。

 何故、こんなにも早く中隊長となって、ショッカーでいうゾル大佐や死神博士のいる「幹部」になったのか。

 それもまだ、はっきりとは、わかっていなかった。




「――そうですわね、地球での名前は……黄島きじまクリスティーヌとでもしておきましょうか」




【第3話:おしまい】




◆ ◆ ◆ ◆ ◆



【あとがき】


ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。

完結でもいい気がするんですが、一話完結のネタがちょいちょい浮かぶので、そういうのを書く為にまだ終わらない方向です。


あと、一週間引きこもって書いていたら、社会的にも体力的にも大変だったので、次回からはもうちょっとのんびり不定期更新になります。

たまにマジで一回の投稿で終わるような話も書いていきたいっす。


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