第二章 嫉妬と誤解【10】
僕はクラスの委員長で、担任からもアリーシアの世話を任されている身だ。
そうでなかったとしても、僕はアリーシアの使徒なのだから、なにか困ったことや気になることがあれば、僕に聞いてくれたっていい。
というか、普通はそうすべきなんじゃないのか?
なのに、アリーシアは僕に頼ることなく、みんなと行ってしまった。
結局、僕がアリーシアと会話したのはただの一度。
しかも、挨拶をしただけ。
……。
「そりゃ落ち込むでしょうが!」
「うおっ! 急に叫ぶな!」
「ふんぐっ!」
絶叫した僕の首を李桜が掴む。
ぐおっ、これはのど輪っ!
思った以上に李桜の力が強く、急速に喉を締め付ける痛みが増し、段々と意識が薄れていく。
あぁ、でも、いいかも。
このまま楽になれたら、それはそれで……。
「おっと、済まない」
意識が断絶しかけた瞬間、李桜ののど輪から解放され、僕はせき込みながら廊下にへたり込んだ。
ふふ、楽には殺してくれないのか。
……死なないけど。
「う、うぅ」
廊下に座り込んだまま、脚を抱え込んで丸くなる。
「お、おい、どうしたんだ? そんなに痛かったのか?」
違う。違うんだよ、李桜。
「悪かった! 思わず反射的にやってしまったんだ!」
必死に謝ってくれる李桜の姿を見て、僕はその姿を見ていられなくて、顔を沈めた。
李桜は悪くなんかない。
なのに、それなのに、李桜は謝ってくれている。
僕のような、情けない男に。
あぁ、どうしてだろう。
涙が溢れてくるぅ。
「ふ、ふふふふ。アリーシアに必要とされない僕に、生きている意味なんてないんだ……」
「は、はぁ? いったい、お前はなにを言っているんだ?」
突然泣き出した僕と、状況を把握出来ないまま、僕を慰める李桜の姿が、廊下にはあった。
それから数分後。
「あぁ、死にたい。いっそのこと、僕を燃やしつくして、灰も残らないほどにしてくれないかな、李桜」
「自暴自棄になるんじゃない、バカ者が」
失意のままの僕を、李桜が鞄で殴る。
痛い。
でも、その痛みがどこか心地いい。
「ありがとうございます」
「殴られて礼を言うな!」
「いや、僕にとってはご褒美ですから」
「本当に変態だなっ!」
うん、僕は変態です、はい。




