第二章 嫉妬と誤解【9】
放課後を迎えて。
「……」
「どうしてそんな、彼女に振られた男子高校生のような空気を纏って、私の教室前にいるんだ、お前は」
鞄を持った李桜が教室から出てくるや否や、的確過ぎると言っても過言ではない僕の様子を指摘した。
あぁ、そうとも。
今の僕の心境はまさに李桜が言った通り。
帰りのSHRが終わって、僕はアリーシアと一緒に帰ろうと思った。
この僕の行動は普通だ。
だって、一緒の家に住んでいるんだから。
帰るべき場所は一緒だろう?
だったら、一緒に帰ることにおかしいことなんてあるわけがない。
そう思って、アリーシアを誘うために、席を立った瞬間、そこにはもうアリーシアはいなかった。
思わず自分の目を疑ったよね。
だって、本当に一瞬の出来事だったんだから。
僕が席を立つ、それこそ一秒にも満たない動作の間に、アリーシアは消えていたんだ。
いや、きちんとありのまま起きた出来事を言うのであれば、連れていかれた、というのが正しい。
だれに?
考える必要もない。
僕が治めるクラスの生徒たちに、だ。
男女の軍勢が、それこそ全員人間離れした――たとえば僕のような、使徒になることで肉体が強化された人間のような――素早さでアリーシアを拉致していったのだ。
教室に残っていたクラスメイトの話では、昼休みの間に、僕を除いた面々で、放課後、アリーシアのために学校の中を案内しようという話になって、選抜された十数名がアリーシアを案内することになっていたらしい。
そこで疑問に思うわけだ、僕は。
僕は、このクラスの委員長である。
もう一度言う。
僕は、このクラスの委員長である。
にも関わらず、僕を蚊帳の外に放って、そんな楽しそうなことを勝手にやるだなんて、信じられない。
なんだ、これは。
内乱か? クーデターか? 下剋上時代の幕開けか?
もしかしたら僕は、自分が思っている以上にクラスでは慕われていないのかもしれない。
それが今の僕を生み出すことになっているが、もっと大きな要因となっているのはアリーシアの行動だ。




