第二章 嫉妬と誤解【2】
「では、話そうか」
「うん」
「数日前に、《狩人》でひとつの決定があったんだ」
李桜はスカートのポケットから、小さく折り畳んだ紙を取り出し、それを僕に渡す。
開けてみろ、と言われて、僕はそれを開く。
「それは、アリーシアに関しての会議で決まったことの追加条項だ」
追加条項。
元々、アリーシアに下された判断は、《狩人》はアリーシアには手を出さず、彼女の使徒である僕を含めて、保護するということ。
そして、保護観察官をつけるということで、李桜が現在僕たちと一緒に暮らしている。
それに、追加があるのか。
僕は紙に目を落とした。
『アリーシア・クロウリーの存在は危険ではあるものの、我々と同じ人の血が混じっている以上、殺すわけにはいかない。故に、《狩人》は彼女を、妖魔としてではなく、人間として育てることを決定する。一時は《狩人》の養成機関にとの話もあったものの、会議の末、通常の学校施設での教育を受けさせることに決定した。人間と触れあうことで、人間らしさを身につけさせ、人間に害を為さないようにするための処置とする。なお、編入先は保護観察官、天川李桜が在籍する高等学校とし、今後、アリーシア・クロウリーに関する全権は、天川李桜が所属する《狩人》日本支部第三師団に委ねるものとする』
と、長ったらしいテキストが打たれていた。
つまりは、なんだ。
《狩人》はアリーシアを人間らしくするために、彼女を学校に通わせることにしたってことか。
うん、まぁ、そういうことなら、僕が反対することはない。
アリーシアは妖魔や《狩人》に襲われるような経験をしてきた。
お父さんやお母さんを失って、辛い目にあっているんだ。
その彼女が、学校に通うことで、日常の楽しみとかを知って、少しでも明るく、人間らしくなってくれれば、それに越したことはない。
話は理解出来たけど、少し納得がいかないことがある。
「どうしてそれを、僕に内緒にしていたの? 言っちゃダメだったの?」
「いや、そんなことはないんだが……」
《狩人》の方でダメだって言われているのならわかる。
でも、そうじゃないなら、どうして僕に黙っていたのかがわからない。
アリーシアが学校に通うっていうのは、僕にも関係があることのはず。
僕は彼女の使徒だし、彼女が通う学校にもいるんだ。
にも関わらず、どうして内緒にする必要があるんだ?
李桜は少し、言い辛そうにしながらも、口を開く。
「……アリーシアに頼まれていたんだ。恭平には黙っていてくれ、と」
「……なんで?」
「……悪いが、そこまでは」
と、李桜は首を左右に振った。
アリーシアが、僕には伝えないように言っていた、のか?
でも、なんで。
そんな、黙っているようなことじゃないはずなのに。
どうして。
なにか、理由があるのか。
でも、あったとしても、いったいどんな理由があるんだ。
大切な話じゃないか。
彼女にとっても、僕にとっても。
なのに、どうして……?




