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僕の愛しい吸血姫  作者: 大成ケンジ
第二幕―最強の妖魔――
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断章 過去からの刺客

町中を、揺らめくように、彼は闊歩する。



その場にはおおよそ不釣り合いな銀色の甲冑を着た、まるで仮装パーティから抜け出してきた様相の彼は、歩みを止めることなく、ただ進む。



それをだれも不思議に思わない。



いや、違う。



だれの目にも、彼の姿は目に映らない。



彼が甲冑に施した『魔術』によって、彼は自身の姿を隠しているのだ。



現在の彼を視認出来るのは、彼と同じ存在、あるいは仇為す存在のどちらか。



(気配は、二つ……いや、三つか)



五感を街全体に張り巡らせる。



(ひとつは、討ち人。もうひとつは、同種。残りのひとつは、あまりにも小さい。使い魔程度の魔力だが、我が感知するということは、おそらく使徒の類か)



感じた三つの存在を把握して、その三つがほとんど同じ場所にあることに気づく。



しかし、どうにも魔力の発生を感じない。



もし彼らが交戦中ならば、どちらかの力を感じるはずだが、それがない。



おかしい。



狩る存在と、狩られる存在がそろっているというのに、どうしてその場に戦いが起きないのか。



……まぁ、いい、と彼は思考を止める。



彼らが戦闘中であろうがなかろうが、自身には関係のないこと。



自身に関係がないことを考えるような無駄な行為を、彼は侵さない。



しかし、と歩みを止める。



彼にぶつかりそうになった子供が、それが当然とばかりに、彼を通り抜けた。



自身の存在を希薄にする『魔術』であるが故に、それは起こる。



存在しないものは、存在するものに影響を与えることは出来ないのだから。



彼は再び感覚を研ぎ澄まし、捉えた三つの中、その中でも彼と同種の存在の力を探る。



(不自然に、弱い。器そのものは大きいというのに、そこに注がれた力が異常なまでに少ない。なんらかを理由に、力を失ったか?)



原因を探ることは出来ない。



(この器は大器と呼ぶに相応しい。しかし、何だ? この気配から漂う、懐かしい何かは……)



さらに、さらに、感覚を研ぎ澄ます。



すべての神経をただひとつの反応にのみ集中し、感じる何かを追い求める。



どこかで、いつか、それは、あった。



「っ!」



そして、気づいた。



あまりにも鮮烈で懐かしいその何かは、確かに覚えている。



いや、彼はそれのみを追い求めてきたのだ。



「くくく、なるほど。よもや、このような極東の島国に身を置いていたとは……」



心の底からの愉悦に、甲冑の奥に笑みが漏れる。



長年、追い求めてきた。



ただただ、強者を。



いつかと待ち続け、探し続け、そしてようやくたどり着いた。



「さぁ、あの日の約束、果たしてもらおうではないか」



彼は再び歩み始める。



「金色の鬼、今こそ、我は貴様との戦いを求めよう」



銀色の甲冑を纏った彼、『剣誓』の名を持つ妖魔、デュラハンが迫ることを、まだ誰も知らない。






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