第一章 学校デビュー【6】
土下座を終えて、再び席に。
響子は構えたテレフォンを戻して、手を顎に当てて、なにか考え事をしている。
「どうしたの?」
「……」
無視ですか、さいですか。
まぁ、考えているんだから、邪魔するな、ということなのだろう。
なら、僕は響子の邪魔をすることなく、朝食にありつこうとしよう。
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「なるほど。ええ、大体把握しましたよ、兄さん」
「君は急になにを言い出すんだ?」
僕が朝食を食べ終わったとほぼ同時に、急に響子が口を開いた。
時間にして、十分くらいの思考をしていた響子だけど、いったいなにをどう把握したと言うのだろう。
「兄さんはアリーシアさんが好き。そしてアリーシアさんとはちゅーをした仲。間違いは?」
「ありませんけど、言葉にされると恥ずかしいです」
僕だって十代の少年。
照れはある。
「乙女みたいなことを言っていないで。……で、兄さんの不安はアリーシアさんにどう思われているか、ですよね?」
「まぁ、そうだね」
頷いて答えると、響子は眼鏡をくいっと押し上げて、不敵に微笑む。
「ずばり、試してみる、というのはどうでしょうか」
試す? と僕が首を傾げる。
響子はええ、と答えて、続ける。
「兄さんが他の女性と付き合うんですよ。そうして、アリーシアさんがその方に嫉妬の感情を抱きでもすれば、彼女も兄さんのことを少なからず想っている、ということです」
ふむ、なるほど。
僕が、アリーシアが好きだと言いながらも、他の女性と付き合う。
もしアリーシアが僕のことを好いてくれているのなら、アリーシアは嫉妬してくれるってことか。
まぁ、それなら、アリーシアが僕のことをどう思っているのかもわかるし、割と簡単な方法だ。
だけど、ひとつ問題がある。
「その、僕と付き合う女性は、だれなの?」
「私は嫌です」
「即答しなくてもわかってるよ。相手が響子じゃおかしいでしょ」
「天川さんなどはどうですか? 彼女なら、事情を説明すれば、手を貸してくれると思いますけど」
李桜か。
李桜は、どうだろう。
彼女の生真面目な性格を考えると、こういう、だれかを騙す、ようなやり方には協力してくれなさそうだけどな。
かと言って、だれかほかに協力してくれそうな女性の友達はいない。
……というか、響子に連絡先を消去されて、連絡の取りようがない。
「うん。一度、李桜に話してみるよ」
「はい。もし天川さんが協力してくださるのなら、それからまた計画を練りましょう」
そう言って、響子は自分の朝食を食べ始める。
最初こそは、僕をからかっていたようだけど、あとになってからは、真剣に僕のことを考えていてくれたんだよな。
いったいどういうつもりなんだろう。
じぃっと響子を見ていると、
「なんですか?」
と響子が箸を止めて、僕を見た。
「いや、やけに協力的だな、って」
「ええ、まぁ。私も弱っている兄さんを苛めては、面白くはありませんから」
……響子はいつも通りだなぁ。




