第一章 学校デビュー【5】
最近は受けていない電流制裁を思い出して震えていると、
「兄さんは不安なんですか?」
と響子が訊ねてきた。
「不安?」
「はい。アリーシアさんにどう思われているのかわからないと、不安に思っているんでしょう?」
「あぁ、うん。そうだね」
僕は彼女に永遠を誓った。
彼女の使徒として、彼女とともに在り、彼女の永遠を守ることを、誓ったのだ。
そして、彼女はそれに応えてくれた。
僕に、彼女と一緒にあることを、許してくれた。
でも、それだけなのだ。
それ以降、僕がどんなに彼女に好意を示しても、彼女の方からそれに応えてくれることはない。
アレイスターの一件があって、僕たちは確かに固い絆で結ばれたはずなのに。
……いや、もしかしたら、そう思っていたのは僕だけで、もしかしたら、アリーシアはそうじゃないのかもしれない。
だとしたら、僕ってめちゃくちゃ恥ずかしい奴なんじゃないか?
考えれば考えるほど、僕ばかりが前に進んでいるつもりだけのように思えてくる。
「……兄さん、ひとつ、訊いてもよろしいでしょうか」
「えっ、あぁ、いいよ。なにかな?」
では、と一度咳払いをして、響子は口を開く。
「兄さん、アリーシアさんになにかしましたか?」
「なにかって?」
訊ねて、湯呑に入ったお茶を口に含んだ。
「そうですね……例えば、キスとか」
「ぶふぅー!」
初っ端から的を射てきた響子の言葉に思わず口に含んだお茶を噴き出す。
しかし、瞬時に顔を背けることで、どうにか朝食への被害は免れる。
「けほっ、けほ……」
「どうやら、当たりのようですね」
「ナンノコトカナー?」
「誤魔化しても無駄ですよ。私に嘘が通じるとでも?」
「……ですよねー」
観念するとともに、キッチンから台拭きを回収して、僕が噴いたお茶を拭いていく。
拭い終わった台拭きはシンクに戻し、席に戻る。
「で、したんですか?」
「……しましたけど、なにか?」
もうこうなったら開き直るしかない。
「あぁ、そうだよ。僕はアリーシアとちゅーをしたよ。なにか文句があるっていうのか?」
「文句はありませんが、兄さんの高圧的な態度に私がイラつきました。警察を呼んでもいいですか?」
「調子に乗ってごめんなさい」
土下座する僕の姿が、そこにはあった。
というか、彼女をイラつかせると、無条件に警察が呼ばれるっていうのはいったいどういうことなんだろう。
おそらく、警察をそんなふうに使うのは響子くらいだと思う。




