第一章 学校デビュー【1】
あの日。
僕が吸血鬼、アリーシアに血を吸われ、使徒になったあの日から、一カ月ばかりが過ぎた。
響子が家に戻って来て、アリーシアと睨み合いを繰り広げたり、李桜に襲われ、左腕を燃やされたり。
そして、アリーシアと僕は彼の想いを知ったり。
そんなことが、たった一月の間にあって。
今、季節は初夏を迎えようとしていた。
起床した僕は、いつものようにベッドを這い出て、居間に向かった。
寝惚け眼で居間に入ると、そこには彼女の姿がない。
「あれ、李桜は?」
そう、李桜の姿がないのだ。
彼女は僕とアリーシアの保護観察官として、この伊浪家で暮らしている。
仕事で海外にいる両親の部屋を使ってもらっているんだけど、朝の居間に彼女の姿はなかった。
おかしいな。
李桜がうちで暮らし始めてから数日、彼女が僕よりも遅くにやってくるなんてことはなかったのに。
「天川さんなら、アリーシアさんと先に出ましたよ」
僕の疑問の声に、響子が答えた。
響子は、彼女が通う女子高のセーラー服の上にエプロンを身につけて、どうやら朝食の用意をしていたらしい。
はて、先に出たっていうのはどういうことだ?
しかも、アリーシアも一緒っていうのがよくわからない。
アリーシアはうちの中で、最も朝が遅い。
下手をすれば、僕たちが出かけた後に起きることもあるらしいし。
少し前までは一緒に寝ていたけど、うちの(自称)風紀委員こと響子のお達しもあって、アリーシアは現在、父さんの書斎で寝ている。




