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僕の愛しい吸血姫  作者: 大成ケンジ
第一幕―満月の夜、僕は使徒になる―
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第六章 伊浪家の朝【8】

「では兄さん、私たちは学校に行ってきます」



朝食を食べ終えて、少しすると、制服に着替えた響子と、元々制服だった李桜が席を立った。



「兄さん、いくら腕が治ったとはいえ、繁華街の方にナンパに行かないように」



「行かないよ。いつ僕がそんな素振りを見せたのかな」



「えっ、違うんですか? なら小学校に行くんですか、ロリ兄さん?」



「マジで勘弁してください」



心から懇願する僕だった。というか、お茶をすすりながら一服していた僕の姿はそんな風に見えるのか……?



「恭平、保護の件は放課後に報告してこよう。正式な決定が降りるのはまだだろうが、拒否されることはないだろう」



「うん。お願いするよ」



「あぁ」



二人を送り出すため、玄関まで向かう。



アリーシアは朝食を食べ終えてから、ずっとソファの上。もはやあのソファはアリーシアの聖域と化しているのかもしれない。



「シスコン兄さん。大好きな妹とのしばしの別れ。抱きしめてもよろしいのですよ?」



「抱きしめたら警察に連絡するくせに」



「当然でしょうが」



「だったら変に期待させないでよ!」



「妹になにを期待しているんですか、兄さんは」



呆れ顔の響子。



別に響子に女性的な魅力を求めているわけじゃないが、ただ兄妹のスキンシップをだなぁ……。



「昔の響子は可愛かった……」



「それはどういう意味ですか今は可愛くないという意味ですかもしそうなら兄さんを殺して私は生きます」



「今も可愛いですはい」





というか、どうやって僕を殺すつもりなんだろう……。おそらく社会的に殺すという意味で言ったのだろう。



「伊浪妹、別れが寂しいのはわかるが、あまり兄に構ってもらっていては、時間がなくなるぞ?」



「だ、だだだれが寂しい女ですか!」



「いや、だれも寂しい女とは言っていないが」



「ははは天川さんはおかしなことをおっしゃられる私が寂しくて兄さんに構ってもらっているなんてそんなはずありませんええありませんともむしろ私が兄さんを構ってやっているんですよそうに決まってるんですよそれが以外ありえるわけないじゃないですか」



珍しく動揺した響子が壊れている! 滅多にない光景だけに、僕もどうしていいかわからない。



なんか眼鏡もかたかた揺れてるし、ちょっと怖い。



出来ればこのまま居間のほうに戻ってアリーシアを愛でていたい。でも響子をこのまま放っておくのは兄としてどうなのだろう……。



「響子!」



「っ!」



とりあえず抱きつくことを試みる。



「鉄拳!」



「ぐはっ!」



鼻を打ち抜くストレートが、僕の抱擁を拒否した。いいストレートだ……さすがは僕の妹……関係ないけど。



「冷静になったようだね、マイシスター」



「まさか、今のはわざとだったんですか、マイブラザー?」



「その通りさ」



「おぉ、なんと……」



「響子」



「兄さん」



ガシッ!



強く抱き合う兄妹の姿がそこにはあった。



「なんだかんだ言って、仲が良いんだな」



微笑ましく、李桜が僕たちの様子を見守っていた。



「李桜も入るかい?」



「遠慮しよう」



即答なんだね……。



「兄さん。そろそろ本格的に時間がまずくなってきたので、私は行こうと思います」



「おおっと、そうだね」



響子の通う女子高はこの家からは少し遠い。



響子は口では僕に襲われるから、という理由で家を出たと言っているが、本当は距離の問題なんだと思う。……そう思いたい。



「では行こうか、伊浪妹」



「はい」



「あ、っと、李桜。ちょっと待って」



ドアノブに手をかけた李桜を呼びとめる。



なにも僕は二人を見送りためだけに来たわけじゃない。



そして響子と朝からコントをするためにやってきたわけでもない。



「なんだ?」



「ちょっと聞きたいことがあるんだ。響子は先に行ってていいよ」



「なんですか、兄さん。まさか私には聞かせられない話ですか? その場合自動的に兄さんの夕食は白米のみとなりますがよろしいですか?」



「遅刻してもいいなら聞いてもいいけど……」



聞かれたくないわけじゃなくて、ただ単純にそこを気遣ったつもりだったんだけどな。



「……そうですね。遅刻するわけにはいきません。ですので兄さんの夕食は白米のみです」



「ちゃんと後で話すので勘弁してください」



「……よろしいでしょう。では、兄さん、天川さん、行ってきます」



僕たちはそれぞれ響子に手を振って、後を見送る。



「それで、恭平。話とはなんだ? 私もそう時間があるわけではないぞ?」



「うん。すぐに終わると思うから」



李桜がうちに来たら、ずっと訊こうと思っていたことがある。そして、僕の腕が治ったのと同時だったのはありがたい。



さっきも訊こうと思っていたんだけど、どうにも訊けなかった。



それはまぁ、アリーシアに気を遣ってしまったからなのだが……。



だが、アリーシアは今、テレビにお熱だ。



だから、訊こう。



「アレイスターの最期の場所を教えて欲しいんだ」






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