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僕の愛しい吸血姫  作者: 大成ケンジ
第一幕―満月の夜、僕は使徒になる―
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第六章 伊浪家の朝【7】

「まぁ、兄さんの恥ずかしい愛のポエムはまた後日聞きましょう」



「ポエムを言ったつもりはないんだけど……」



「ポエムった男がなにかを言っていますが無視しましょう」



無視するのか……というか、ポエムったってなんだ? ポエムるという動詞でも存在するのだろうか……。



「兄さんが嫌でないのなら、天川さんはうちで暮らすことに異論はないわけですね?」



李桜は僕が嫌というよりも、男と暮らすことが恥ずかしいって言ってたんだと思うんだけど……あぁ、この家の男は僕だけか。



「……そうだな。この家には私以外にも女がいる……なら、耐えよう」



耐えるほどに、僕と暮らすのが嫌か。泣いちゃうぞ。



「しかし、なぜアリーシアは私を保護観察官に?」



不意に矛先がアリーシアに向けられた。



なんだか長い間右往左往していたけど、確かに李桜を保護観察官に選ぶ理由は気になる。



別に彼女は李桜のことを好いているわけじゃないだろう。会ったのだって、李桜が僕を家に届けたあの時だけだし。



そのアリーシアは、李桜の方を向くこともなく、僕からそっぽを向いたまま、テレビを見た状態で答える。



「あなたが《狩人》の中で一番、わたしたちの状況を理解しているから」



「言われてみれば確かにそうだな」



「変に状況を理解していない《狩人》に来られても困る。だからあなた」



なるほど、とその場にいた全員が頷いた。



《狩人》は妖魔を狩る存在だし、アリーシアのことが気に喰わないと思えば、そのまま襲いかかるということもあり得る。



その点、李桜は僕たちの事情を詳しく知っている。だからアリーシアは、李桜に任せたいと言ったのか。



「そういうことなら、任されよう」



「うん。お願い」



ちっともお願いする態度には見えないが、アリーシアは李桜に言った。



まぁ、彼女にとってはテレビを見ながら話すというのが常だしね。



「では、決まったことを言おう。アリーシアと伊浪恭平は《狩人》の保護下に入る。ここでの暮らし、恭平の学校生活の保障を約束。その代わり、私が保護観察官としてこの家に暮らすことになる。それで異論はないな?」



「うん」



「構いません」



「……」



アリーシアだけは無言だったけど、それは肯定を意味している。



つまり、全員異論はなし。



「では、話もまとまったところで、朝食にしましょう。天川さんも食べられますよね?」



「いや、私は……」



「いいじゃないか。これから一緒に暮らすことになるんだ。遠慮はいらないよ」



「……そういうことなら、頂こう」



響子が朝食をテーブルに並べ、李桜はそれを手伝っている。



僕は、キッチンは女の戦場、という響子のお達しを受け、そのまま。アリーシアはいつものようにテレビに夢中で、ソファの上にいつも鎮座している、ショッピングモールで僕が買ってあげたねこきちを抱きしめている。



……ハーレムって言うのかな、これ。



いや、そんな想像は止めよう。きっと響子のテレフォンが警察を召喚するに決まっている。



「恭平」



キッチンで作業する二人の後姿をにやにやしながら眺めていると、アリーシアが僕を呼んだ。



「髪」



その一言だけで、彼女がなにを望んでいるのかがわかる。



「うん」



だから僕も、それだけ言って、櫛を持ってくるために、洗面所へと向かう。






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