第五章 吸血姫の使徒【15】
「なぁ……恭平」
「なに?」
「お前は、本当に、妖魔と人は分かり合えると思うか?」
「……分かり合える、とは思う。でも、それはとても難しいことだと思うよ」
アレイスターの件の方が珍しいのだ。
人種差別撤廃が叫ばれながらも、それでもなくならないこの世界で、人と妖魔が分かり合うのは、人種差別がなくなることよりも難しい。
でも、可能性は確かに存在している。その証拠がアリーシアなのだから。
「そうか……」
「うん」
僕がそうしているように、李桜もまた、空を見た。
「いつか……そんな世界が来るのだろうか……」
「来てほしいと思うよ……そうすれば、僕も腕を燃やされないで済むしね」
笑いながら冗談交じりに言うと、李桜は苦笑した。
それから少しの間、二人で空を眺めていた。
「では、私はもう行こう」
「アリーシアのこと、どうするの?」
「報告はしなければなるまい。」
そう、と僕。
とりあえずは結果オーライだ。
《狩人》が半妖に対してどんな判断を下すかはわからない。だからまだ完全に安心できるわけじゃない。
「李桜、お願いがあるんだ」
「……なんだ?」
「アリーシアのこと、出来るだけ良くしてもらえるように頼めないかな?」
ずうずうしい頼みごとだとは思う。それでも、頼めるのは李桜だけなのだ。
「……約束はできない」
だが、と李桜。
「だが、善処はしよう。お前の腕をそうしてしまった償いのつもりでな」
「ははっ、それなら腕の一本や二本、安いもんだね」
笑って、それから李桜は僕に背を向けた。
「李桜、もうひとつ頼みたいことがあるんだ」
「まだ、か?」
振り返る李桜に、僕は真剣な眼差しで言う。
「身体が動かないから、家まで運んでくれないかな」




