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僕の愛しい吸血姫  作者: 大成ケンジ
第一幕―満月の夜、僕は使徒になる―
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第五章 吸血姫の使徒【11】

「ねえ、教えてよ。どうして君たちは妖魔を殺すんだ?」



「簡単な話だ。妖魔が人間に害を為す存在だからだ」



「それはおかしいよ」



そう、おかしいのだ。



彼らの言うことにも、理解できる部分はある。



でも、ぜんぶひっくるめては理解できない。道理に適っているようで、そうでないのだ。



「妖魔が人間に害を為すから、妖魔を殺す……それは正しくないよ」



「なんだと?」



「人間に害を為した妖魔を殺すのなら、わかる。だけど、君たちは違う。人間に害を為すと決めつけて、妖魔を殺している。それは……おかしなことだ」



アリーシアと李桜の話を聞いて、ずっと思っていた。



《狩人》はおかしい。



《狩人》が妖魔を狩るための存在だというのはわかる。



それ自体はいい。人間に害を為す妖魔なら、狩っても良いと僕も思う。



でも、彼らは人間に害を為した妖魔を狩るだけじゃない。



人間に害を為すと勝手に決め付け、妖魔という存在そのものを殺すのだ。



妖魔に対しての善悪など関係なく、妖魔であれば殺す。それが《狩人》だ。



だから僕は、《狩人》とは相容れない。



彼女たちがやっていることは、妖魔に対しての無差別殺害に他ならないのだから。



僕の指摘に、李桜が揺らいだ。



「よ、妖魔は必ず人間に害を為す! 奴らはそういう存在だ!」



「どうして確信を持てるの? 君は妖魔の心を本当に理解して、そう言っているの?」



李桜は答えることができない。だって、彼女は妖魔を理解していないから。



ただ一方的に、そういうものだと決めつけていた彼女に、肯定することはできない。



「妖魔だから、というだけで彼らを殺す君たちが、妖魔を絶対悪のように、どうして語ることが出来る? 僕から見れば、君たちのほうがよっぽど非道で、非情だ」



「黙れ!」



「反論できないのがいい証拠じゃないか。黙れなんて、幼稚園児でも言えるような暴言を撒き散らし、明確な答えを提示できない。君だって、わかっているんでしょ? これは、おかしなことだって」



李桜が腕を振るう。



すると、そこから火が噴出し、僕をなぎ払うように襲いかかる。



抵抗する力を持たない僕は、それを受けて、フェンスに叩きつけられる。



『燃焼』ではなく、『固体化』で攻撃してきたことを喜ぶべきかな、なんて考えることができるのだから、僕はまだ割と余裕なのかもしれない。



いや、違う。余裕が生まれ始めているのだ。



逆に、余裕を失っているのは李桜だ。



僕の指摘は、少なくとも、彼女の理性を失わせる程度には、彼女を揺さぶることができた。



彼女らしからぬ、突発的な行動を起こさせることができた。



妖魔だから、殺す。



アリーシアは妖魔だ。だから、殺される。





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