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僕の愛しい吸血姫  作者: 大成ケンジ
第一幕―満月の夜、僕は使徒になる―
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第五章 吸血姫の使徒【5】




使徒となることにより、肉体を強化された僕は、李桜よりも優れている。



いくら『妖魔殺し』の所持者とはいえ、異能の力を有するだけで、肉体が強化されるわけじゃない。



だからこそ、僕は瞬時にして李桜の眼前まで跳ぶことが出来た。



だが、



「甘い!」



拳を振りあげ、それを李桜の腹に叩きつけようとした瞬間、眼前に広がるのは彼女を守るようにして現れた『炎』。



もしこのまま拳を通せば、僕の拳がどうなるかんて、わかりきっている。



だけど、それがどうした。



僕は死なない。どれほど傷つくことがあろうが、関係ない。



『炎』さえも貫くように、拳を振るう。



しかし、



「なっ!」



拳は『炎』によって止められた。



予想外のことに、一瞬の隙を生んでしまう。



「そこだ!」



「っ!」



隙を見逃さない李桜が左手を振り上げる。



そこから湧き上がる『炎』は腕を模した形を創造し、なぎ払うように僕に襲いかかる。



それを、人間離れした跳躍でなんとか回避し、李桜から距離を取る。



空振りを見せた『炎』の腕は、李桜を守るように展開した『炎』の盾とともに消滅する。



少し離れた距離感を保持したまま、僕たちはにらみ合う。



おかしい。



李桜の『炎』は、どこかおかしい。



僕は、『炎』の盾を殴りつけた拳を見る。



僕が『炎』の盾に拳をぶつけていたのは時間にして二秒程度。



それくらいあれば、拳が黒く焦げていてもおかしくはない。



だけど、僕の拳にはそんな痕が見られない。



いや、そもそも、僕は『炎』の盾から熱を感じなかった。



どうしてだ……?



「不思議か?」



不意に、李桜の口が開いた。



拳を見つめながら疑念の表情を浮かべる僕に向かって、左手を伸ばして見せる李桜。



そこから現れるのは『炎』の腕。



「私の『妖魔殺し』、『炎』には二種類の使い方がある」



『炎』の腕が天にそびえる塔のように振りかざされ――



「ひとつ、『固体化』」



それがコンクリートの地面に強く叩きつけられる。



ドスンッ!



まるで地震が起きたかのような衝撃が発生し、揺らめく校舎に、なんとか踏ん張る。



叩きつけられた『炎』の腕の跡地には、大きな窪みが見られ、粉砕されたコンクリートの破片が散らばる。



それを為した『炎』の腕はすでに姿を消したが、李桜は依然として、腕を伸ばしたままだ。



「私の『炎』は、火をひとつの固体として扱うことが出来る。故に、こういう風に物理的な破壊を行うことや私を守る鋼鉄にも似た盾を生みだすことも出来る」



「……なるほどね」



なんとか頷いてみるものの、内心、焦りが出ている。その証拠に、額には脂汗が浮かんでいる。



つまり、李桜が顕したさっきの『炎』は『固体化』が施されたものだったということだ。だから僕の拳は『炎』を貫くことが出来なかった。



理解して、素直に厄介に思う。



自傷行為覚悟で『炎』を貫き、李桜に攻撃を加えるという策は、もう取れない。



李桜の『炎』を『固体化』され、その間に新たに発生した『炎』に襲われるというのがオチだからだ。





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