↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の愛しい吸血姫  作者: 大成ケンジ
第一幕―満月の夜、僕は使徒になる―
PR
42/170

第五章 吸血姫の使徒【2】

「なぜだ……なぜ、妖魔に与するのだ?」



「愛しているんだ」



僕の言葉に、李桜は、彼女らしくない表情を浮かべた。



言っていることの意味が理解できない。



目の前の男はいったいなにを言っているのか。そんな感じかな。



僕も別に理解されようとは思わない。



妖魔は、言ってみれば化物だ。



その化物を人が愛するなんて、およそ普通じゃない。



当事者である僕自身も、普通じゃないと思っている。



もしかしたら、アリーシアのお母さんもこんな気持ちを抱きながら、アレイスターを愛していたのかもしれないな、なんて思う。



李桜の反応も当然のことだ。



そんな李桜に僕はふざけたように言う。



「愛だよ? わからないかな? 英語で言えばラブって意味の愛なんだけど」



「……冗談、だよな?」



引きつった笑みを浮かべて、李桜が僕を見た。



僕は首を左右に振って、それに答える。



「冗談でこんなこと言いやしないよ」



そしてもう一度言う。



「僕は、僕の主を愛している」



空気が砕けた。



溢れる殺気が、突き刺すように襲いかかる。



思わず足が震えそうになって、それを必死に堪える。



弱さは見せるな。どれほど怖くても、気丈に振舞え。



自分に言い聞かせ、あくまで動揺を表には出さない。



一歩、李桜が踏み出す。



「今ならまだ間に合う。冗談だと言え。そして、主の居場所を吐け」



「嫌だよ」



「そうか……残念だよ、恭平。お前とは、仲良くなれる気がしたのだがな」



「僕はまだ仲良くなれると思ってるけどね」



それはない、と李桜は切り捨て、僕に背を向け、右腕を前に突き出す。



「広がれ、『炎』」



言葉を発した瞬間、彼女の伸ばした腕から燃え盛る火が、濁流のように溢れだし、屋上に広がる。



それは屋上の扉への道を遮るように広がり、そのままそこに残る。



それから李桜は振り返る。



「私の『妖魔殺し』、『炎』は火を自在に操ることが出来る能力だ」



手のひらに小さな火を顕し、李桜は言う。



「お前は死なない。だが、死ぬよりも非情な苦痛を与え、主の居場所を吐かせてやろう」



すでに優しさは残っていなかった。



目の前の彼女は、僕を同胞と呼んでくれた少女ではない。



僕の主を狩るために、僕を痛めつける『狩人』だ。



この展開は、予想していた。



だから、特段驚きはしない。



李桜の『妖魔殺し』を知って、それに対して動揺しているだけ。それも、表には出さない。



恐れるな。



僕は死なない。



僕に死はない。



アリーシアが無事である限り、なにも恐れる必要はないのだ。



女性に腕を上げるのは、気が引ける。



僕が一番嫌いとすることだから。



女性には優しくするようにという父さんの教えに背くことになるから。



それでも、僕は一歩前に足を進めた。



アリーシアを守ることが出来るのなら、僕は喜んでこの腕を振るおう。



それが、李桜を傷つける結果になったとしても。



「これが本当に最後だ……同胞として、言おう。主の場所を言え」



「断る」



宣言して、拳を握る。



「僕は守ると誓ったんだ。だから、彼女を殺させはしない」



そして、ほぼ同時に、僕らは駆け出した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。