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僕の愛しい吸血姫  作者: 大成ケンジ
第一幕―満月の夜、僕は使徒になる―
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第五章 吸血姫の使徒【1】

月が昇る空の下。



僕は彼女を待っている。



時間にして、深夜。



彼女は、やってくる。



屋上の扉が開いて、そこから姿を現したのは天川李桜。



『妖魔殺し』の所持者にして、『狩人』だ。



僕にははっきりと、李桜の姿が見える。



「整理はついたのか?」



屋上の中心まで来て、李桜は訊ねた。



李桜は、僕が主の居場所を教えるために、この場所に呼んだのだと思っているのだろう。



でも、それは違う。だから少し、胸が痛んだ。



僕は李桜から少し離れたフェンスに背を預けていた。



一度天を仰いで、それから李桜に答える。



「うん」



「そうか、では――」



「教えない」



李桜の言葉を遮って、僕は言う。



「僕は、僕の主の居場所を、君には教えない」



一瞬、呆気に取られた表情を浮かべて、それからキッと厳しい表情へと変わる。



「……なぜだ?」



「教えれば、君は僕の主を殺す。そうでしょ?」



「当り前だ」



あくまで断言する。



「我々『狩人』は妖魔を滅するための存在なのだからな」



それが『狩人』という存在なのだ。



アリーシアからも聞いた、『狩人』がどういうものなのか。



彼らは、根本的な部分として、妖魔の存在を肯定することはないのだ。



人は、自分たちにない力を持つ者を恐れる。



人は、妖魔を恐れた。



その結果、『妖魔殺し』という、妖魔に対抗できる力を持った人間たちが作り上げた組織が『狩人』だ。



妖魔を滅するという大義を掲げ、世界の常識の外で活動を続けてきた存在。



だから、李桜の答えはある程度、予想は出来ていた。



「結論から言うよ。僕は、僕の主を君に殺させはしない。言っておくけど、主に脅されてとか、傀儡になっているとか、そういうわけじゃないよ? あくまで、僕は自分の意思で、それを選んだ」



「人間に戻りたくないのか?」



「そうだよ、っていうのは少し違うかな。僕は人間に戻るわけにはいかないんだ」



どういう意味だ? と李桜。



「僕には永遠が必要なんだ」



アリーシアとともに在るために。



たとえアリーシアを殺すこと以外に人間に戻る方法があったとしても、僕はそれを選びはしない。



彼女と生きるためには、人間の生はあまりにも短いのだから。





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