第四章 君が泣いた日【1】
かつて、人間と妖魔の間に大きな戦があった。
それは尊厳大戦と呼ばれる戦争だ。
妖魔を狩る『狩人』に対して、普段は団結することなどない妖魔らが手を組み、己らの尊厳を賭けて戦ったことから、尊厳大戦と呼ばれる。
妖魔側の代表は、アリーシアの父であり、血吸いの一族、吸血鬼の男であるアレイスター。
アレイスターの元に集った妖魔の数は、その当時、『狩人』に所属していた『妖魔殺し』所有者の十倍にも近い数だった。
しかし、『妖魔殺し』は妖魔に対して優位権を持つ。
だから、数に差はあれど、そうそう押し切られるものではなかった。
しかし、『狩人』は劣勢を強いられていた。
妖魔の指揮者、アレイスターの知略により、『狩人』総本山が襲撃を受け、『狩人』は翻弄され、蹂躙され、殺された。
そして、あともう一歩で陥落させることが出来るというところまでやってきて、妖魔たちは敗北した。
尊厳大戦の勝者は、『狩人』だった。
妖魔たちの敗北の理由には、アレイスターが関係していた。
アレイスターは、もう少しで戦争を終えるというところで、妖魔を裏切り、姿を消した。
妖魔たちの本拠地を『狩人』に流し、襲撃させたと、言われている。
『狩人』に襲われた妖魔たちは突然の出来事に対処出来ず、戦闘指揮を執っていたアレイスターの裏切りもあって、連携を取ることも叶わず、殺されていった。
結局、妖魔たちは『狩人』総本山への襲撃を諦め、その場から逃亡を図り、散り散りになり、敗北した。
ではなぜ、アレイスターは姿を消したのか。
勝てた戦いだったにも関わらず。
それはだれにもわからなかった。
『狩人』に所属する李桜も、アレイスターがどうして裏切ったのかはわからないと言っていた。
『狩人』を恨み、大きな戦まで起こした男が、同胞を裏切った理由。
それは今でも謎とされている。
だけどただひとつの事実として、尊厳大戦以降、アレイスターは妖魔と『狩人』の両方から狙われるようになった。
妖魔からは裏切り者として、『狩人』からはその強大な力を恐れられて。
そして、両方からの逃亡の果てに、永遠を司る吸血鬼は、死を迎えた。
彼がいったいなにを想い、なにを守り、なにを失ったのか。
僕には、わからない。




