↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の愛しい吸血姫  作者: 大成ケンジ
第一幕―満月の夜、僕は使徒になる―
PR
32/170

第三章 狩人襲来、そして……【7】

五分程度、人混みを歩くと、後ろからまた指示が飛んでくる。



「ショッピングモールを出ろ」



「……目的は、なんなんだ?」



「従え」



あくまで一方的な態度。



だけど、僕はそれに従って、ショッピングモールを出る。



もちろん、後ろの人物は付いてきている。怪しまれない程度の距離を保ちながら。



ショッピングモールを出ると、すぐ目の前に交差点がある。



僕はその交差点を進んで、先にある公園を抜ける。



指示は飛んでこない。これでいいということなのだろうか。



ふと、アリーシアのことが気にかかったが、今はどうすることも出来ない。



なるべく早く、彼女のもとに戻るためにも、今は従うしかない。



公園を抜けた先には、小さな商店街がある。商店街と言っても、すでに寂れていて、そのほとんどが店を閉めている。



それも仕方がない。



近くにあんな大きなショッピングモールが出来ているのだから。



商店街は案の定、ほとんど閉まっている。



「近くにある魚屋に入れ」



「魚屋って、あそこか?」



「そうだ」



商店街に入ってすぐに、魚屋はある。



しかしそこはもうやっていない。経営が困難になって、家族ごと夜逃げしたって噂を聞いたことがある。



だから、魚屋はシャッターを閉じたまま。



シャッターが閉じられているのに、どうやって入れって言うんだ。



一応、言われた通り、シャッターの前までやってくる。



「開けろ」



「鍵とか、持ってないんだけど」



「お前の力なら、造作もないことだろう?」



言われて、身体が震えた。



後ろの人物は、知っている。僕が、使徒であるということを、知っている。



だから、言える、お前の力なら、と。



使徒になることで、人間の限界を超越した力を有する僕の力なら、と。



何者、なんだ……?



そうして、振り返ろうとして、



「振り返るな」



ざくっと、背中になにかが突き刺さった。



「うっ!」



熱い痛みが背中に広がって、声を上げそうになる。



だけど、叫ぶほどの痛みではない。鋭利な感覚はまだ背中に残っているけど、それほど深くは突き刺さっていない。



それはすぐに抜かれ、背中から血が流れていることが自分でもわかる。



「開けろ」



振り返ろうとした状態のまま固まった僕に、指示を飛ばす人物。



背中に確かな痛みを感じながら、僕はシャッターの溝に指を突っ込んで、力を加える。



やはり鍵がないシャッターは簡単には突入を許さない。



だけど、これはまだ人間程度の力を発揮していないからだ。この数日の間に、力の制御は覚えた。



人間と使徒の境界線を保つために。



だから、これからはその境界線を越えて、使徒の力を使う。



「ぐっ!」



足腰に力を込めて、限界を超越するための力を注ぐ。



この程度、なんてことはない。



ガシャン!



ほんの少し、力を注いだだけで、シャッターの鍵は壊れた。



いないとはいえ、ここに住んでいた魚屋さんに心の中で謝罪をしておく。



「入れ」



再び指示が飛んできて、僕はそのまま中を進む。なにもない魚屋の中。寂れている。



暗闇の中を進まされて、そして――



ガシャン!



轟音を上げて、シャッターが閉められる。



その音に反応して振り返るが、背中から襲われることはなかった。



そして僕の瞳は、暗闇の中に、確かに人の姿を見た。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。