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第二章 主VS妹【6】
「いいの?」
アリーシアが僕を見ていた。
昨日のように、申し訳なさそうな顔で。罪悪感に満ちた表情で。
「響子には嘘は通用しないからね。それに、いずれは気づくことだ。知るのが早いか遅いかの違いで、いずれは知るんだ」
僕はたまらず、アリーシアの手を握っていた。
両膝をついて、懇願するように、彼女のそれを頬に押し当てた。
「僕はもう、ひとりだ。僕には君しかいない。だから……僕をひとりにしないでくれ……」
「……うん」
ソファから降りたアリーシアが、僕の頭を胸に抱えた。
頭を撫でる手つきは優しくて、母のそれを思い出させる。
「そばにいる……だから」
――泣かないで。
これはいったい、なんの涙だろう。
人間じゃなくなったこと?
使徒になったこと?
響子に知られてしまったこと?
アリーシアに縋ってしまったこと?
僕には、その答えはわからなかった。




