第一章 満月の夜、僕は使徒になる。【13】
「伊浪恭平」
「普通に恭平でいいよ」
「……恭平、あなたはどうする?」
その言葉に首を傾げた。
どうするって、それはいったいどういう決断を僕に迫っているんだ?
少なくとも、僕の目の前には選択肢らしい選択肢は用意されていない。
アリーシアの黒眼は揺らぐことなく僕を捉え続け、首を傾げる僕に選択を迫る。
「吸血鬼の使徒になったあなたは、これからどうする?」
「君と生きろと言うのなら、それに従うよ? だって君は僕の主なんでしょ?」
「わたしはあなたの主。でもわたしはあなたに強制はしない。あなたが生きたいように生きればいい。でも、使徒は主が死ぬそのときまで、死ぬことはできない。あなたはわたしが死ぬまで、死ぬことはできない。でも、わたしたち吸血鬼に寿命は存在しない」
「そうなの?」
「妖魔には存在理念と呼ばれるものがあるの。それはその妖魔の存在を支えるものであり、わたしたち吸血鬼の存在理念は『永遠』。永遠を司る妖魔であるわたしに、寿命は存在しない。つまり、あなたは半永久的に死ぬことはできないの。使徒になったそのときから、年を取ることもないし、寿命に縛られることもない。文字通り、あなたは『不老不死』になったの。それを踏まえた上で、今まで通り生きたいというのなら、それでもいい」
つまり、僕に示された道はふたつ。
アリーシアとともに、アリーシアの使徒として彼女と生きる道。
それか、アリーシアとは別れ、今まで通り、人間として、と言っても人間ではないのだけれど、普通に生きて行くか。




