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第一章 満月の夜、僕は使徒になる。【11】
「伊浪恭平」
アリーシアが僕の名前を呼んだ。
複雑そうな表情。
僕がアリーシアに向けていたような表情で、アリーシアは僕を見た。
そしてアリーシアは告げる。
どうしようもない現実を、突きつける。
「あなたは、人間じゃなくなった」
時が止まったと錯覚するような感覚に陥る。
頭を後ろから鈍器で思い切り殴られたような衝撃が、襲いかかる。
「……そうなんだ」
「驚かないの?」
「ううん。驚いてはいるよ。でも、なんとなく予想はついていたから」
アリーシアに血を吸われたとき。
アリーシアが吸血鬼だと知ったとき。
僕の肉体に異変が起きたとき。
可能性として、心のどこかに留めておいた。
自分が人間ではない、なにかになってしまっているかもしれないということを。
それでも、内心は穏やかではない。
恐怖はある。
不安もある。
だけど、きっとそれらを抱いたところで、僕は人間には戻れないのだろう。
それをアリーシアの表情が物語っている。
戻れるのなら、ああも申し訳なさそうな表情はしないだろうから。
これはきっと諦めだ。
でも、それでいい。
どうしようもない現実なら、受け入れるしかない。




