9 ランガン
父親がこれほど場違いに、これほど打ちのめされて見えたことはなかった。
そして今――すべてが、間違った手の中に落ちているように見えた。
ランガンの父が口を開いた。まだ悪夢から覚めるのを待っているような顔で。
「なぜここにいる、息子よ。会社はどうなった。このマフィアどもは何だ」
戸惑いと、悲しみのこもった声だった。
ランガンはゆっくりと立ち上がり、苦い笑みを浮かべて答えた。
「やるべきことをやっただけだ、親父。会社を立て直した。今この街を握っているのは俺だ。この情報も、この資源も……全部、俺の支配下にある」
その声には憎しみが満ちていた。
一語一語が、父親の心臓をまっすぐ切り裂く刃だった。
娘は、信じられないという目を見開いて、拳を握りしめた。
「あなたを疑ったことなんて、一度もなかった、ランガン。でも……これはやりすぎよ。全部壊したじゃない! こんなの腐ってる! あなたのせいで私は殺されかけた。お父さんも殺されかけたのよ! 全部、あなたの度を越した野心のせいで」
ランガンは蔑むように彼女を見た。
「お父さん? 野心? 何も分かっていないな。これは最初から全部、俺のものだったんだ。お前が家で遊んで年月を潰しているあいだ、俺は会社を肩に担いでいた。親父は書類にサインした。これは俺のものだ。お前がそんなに……弱くなければ、何も起きなかった」
父親が、無力さに割れた声で叫んだ。
「お前はまだ準備ができておらん、ランガン! 自分が引き起こした惨状すら見えておらんのだ! これを立て直すのがどれほど難しいか分かるか! 元の場所に戻すのに、どれだけかかると思っている!」
ランガンが笑った。
暗い笑い方だった。家族の苦しみが、聞き飽きた古い冗談であるかのように。
「興味がない。もうあんたたちから必要なものは何もない。金も、支配も……全部回っている。だがあんたたちは……あんたたちは過去だ。今の俺に必要なのは、それが崩れていくのを見ることだけだ」
そして続けた。
「新入りの坊やが首を突っ込みたいなら、好きにすればいい。……ここで埋められたいなら、残っていろ」
上着の下から拳銃を抜いた。
最初に父親へ向けた。
それからゆっくりと、妹のほうへ回した。
「親父、まずあんただ。そのあとは、お前の番だ」
娘が一歩下がった。心臓が激しく打っていた。
絶望が押し寄せてくる。それでも、その目は揺れなかった。
キアロコは動かなかった。
その目は危険な強さで光っていた。まるで影が、合図を待っているかのように。
ランガンは残酷に笑っていた。指が、少しずつ引き金に近づいていく。
「親父があのとき素直に書類にサインしていれば、何も起きなかったんだ」
舌を鳴らした。
「お前にまだその資格がなかったからだ!」
父親が叫んだ。
「渡したくなかったのではない! 足りなかったのだ! そして見ろ、この有様を!」
妹が兄を見た。怒りと恐怖のあいだで、声が割れていた。
「私たち、殺されかけたのよ。どうして気づかなかったの。何日も行方不明だったのよ。誰も私たちの消息を掴めなかった。お父さんを見て、私たちを見て……あなたと私がここに突っ立って、何もしないでいるの?」
父親が娘を見て、こう付け加えた。
「あれほど長いあいだ行方不明だったのに、お前が気づかなかったというのが信じられん。家のシステムが動かなかったことも、会社のそれが動かなかったことも。外を見てみろ……規則もない、仕組みもない」
娘が兄を睨みつけた。
「どうして全部こんなことになってるの。何があったの。どうやってここまで落ちたの。どうして私たちのことを知らなかったの。答えて、兄さん」
ランガンが笑った。
「まだ分からないのか? お前を攫わせたのは、この俺だ」
嘲るように、それが世界でいちばん当たり前のことであるかのように言った。
父と娘は、その言葉に打たれた。聞いているものが信じられなかった。
ランガンが声を張り上げた。
「だから、お前の消息が途絶えたときに、親父を探しに出させたんだ。親父が家を出た瞬間、俺はシステムを全部落とした。奴らが親父を捕らえて、街の外へ運び出せるようにな。車で追わせて、あの場所で腐らせたまま放っておいた」
そして続けた。
「親父のサインを取りに行かせた。だが運の悪いことに、あの間抜けどもは取り逃がした。俺が必要なのは父親のサインだ。お前のじゃない。そして出られなかったのは、お前だけだった」
「親父はもう一度お前を探しに行かざるを得ない。それが分かっていたから、待っていた。……だが、どうやってここまで辿り着いたのかは分からんがな」
「兄さん……じゃあ、全部あなたがやったの?」
彼女が叫んだ。拳を握りしめ、怒りが声から溢れ出していた。
「あなたのせいで、私たちは殺されかけたのよ! どうしてそこまで堕ちられるの!」
「心配するな」
ランガンが答えた。
「あの間抜けどもは殺せなかった。だから俺がやる。どうせ親父は素直にサインなどしない。二人とも死ねば、これは全部俺の手に落ちる。同じことだ。ハハハ。さっさと殺したほうが、みんなにとって楽だろう」
「息子よ……本気で殺すのか。妹と、このわしを」
父親の声は壊れていた。
「お前は全部見てきたはずだ。ずっと会社にいて、学んできた。準備ができていないと、わしには分かっていた。見ろ、見てみろ。これをどこまで持っていった」
「あんたにとって、俺はいつまでも準備ができていなかったんだ、親父」
ランガンが言った。
「何をしようが、決して充分ではなかった。だが、それももう終わりだ。これからは全部、俺のやり方でやる」
笑いながら、拳銃を父親に向けはじめた。
父親が、娘の前に立った。
娘はただ、それを見ていることしかできなかった。
必要ならこの人は自分のために命を捨てる。そう分かっていた。
「お父さん、やめて! どいて!」
そう懇願した。
ランガンが笑った。
「落ち着け。どうせ二人とも殺すんだ、心配することはない。親父が英雄ぶるなら、二人ともここで死ぬだけだ。サインしようがしまいが、どのみちこれはもう俺のものだ」
すべてが、凍りついていた。
老人には分かっていた。二人の命が、糸一本でぶら下がっていることが。
ずっと守り、愛してきた家族が、今その自分を殺そうとしていることが。
できることは何もなかった。
蔑みの笑いを浮かべる息子を、ただ見ていることしか。
そしてその背中で、娘は無力なまま、動くことも、助けを呼びに走ることもできずにいた。




