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6 苦しい夜



階段を上り、二階へ出た。


マフィアが二人、話しながら下りてくるところだった。階下で何が起きたか、まだ知らない。


煙草を口の端に垂らし、その煙が宙に漂う埃と絡み合っていた。


顔を上げ、侵入者二人を見た瞬間、反応は自動だった。


構えを取る。銃口が上がる。


だが、老人のほうが速かった。


バットを槍のように投げた。


木が空気を裂き、前にいた男の顔面をまともに捉えた。乾いた、嫌な音がした。


男は後ろへよろけ、足場を失い、階段の反対側へ落ちた。壊れた人形のように段を跳ねながら。


キアロコは待たなかった。


二人目へ跳び込み、胸に蹴りを叩き込む。身軽に、正確に。


二人はもつれたまま階段を転がり、下の踊り場まで落ちていった。


一言も発しなかった。


ただ、倒しただけだった。


その冷たさに、老人は丸一秒、動けなかった。


二人とも下を見た。


重なって転がる身体。動かない。


老人は何か言おうと口を開けたが、何も出てこなかった。


ただ、唾を飲み込んだ。


二人はさらに上へ向かった。


三階――


十人以上いた。


そこら中にいた。柱のあいだ、木箱の陰、錆びたドラム缶の脇。


無線を持つ者。煙草をくわえた者。銃を胸の前で組んでいる者。


その声が、空の壁に反響していた。


老人とキアロコは、崩れた壁の陰に隠れていた。


老人の呼吸は苦しげで、空いた手で胸を押さえていた。


そして、一つの案が浮かんだ。


「聞いてくれ、坊主……」


短い息の合間に、そう呟いた。


「わしは……階段から行く。お前は……音を立てろ。奴らの気を引くんだ」


キアロコは眉をひそめた。完全には賛成できなかった。


だが、進むしかないことは分かっていた。議論している時間はなかった。


「分かった」


素っ気ない返事だった。


老人が先に動いた。


身を屈めて奥の階段へ走る。足取りは覚束ないが、音は立てなかった。そして反対側へ身を隠した。


キアロコも別の位置へ移りはじめた。


しゃがみ込み、次の一歩を測る――


その足が、空き缶を蹴った。


音がフロア中に跳ね返った。金属的で、甲高い音。


充分だった。


「そこだ!」


誰かが叫んだ。


「捕まえろ! 逃がすな!」


キアロコは走り出した。


十人分の足音が背後で轟いた。怒号と指示が混ざり合う。


隠れ場所から、老人はそれを見ていた。


マフィア全員が少年のほうへ向かうのを見た。


できることはなかった。ただ、上へ行くしかない。


腐った木の古い扉を押し開け、その奥へ消えた。


キアロコは囲まれていた。


自分の命が糸一本でぶら下がっていることは分かっていた。


銃撃が始まった。一発、二発、三発。さっきまで彼がいた場所を狙って。


別の柱へ走る。その背後で、木が破片になって跳ねた。


さらに銃声。


一つ動きを間違えれば、そこで真っ二つになる。


マフィアの一人が合図をした。


もう一人が集団から離れ、キアロコが隠れているほうへゆっくりと歩いてくる。銃を前に突き出し、角を探りながら。


キアロコは柱に貼りついて待った。


鼻で呼吸する。


足音を数える。


男が角を曲がった瞬間――跳んだ。


首を掴み、腕をねじり、前へ回した。


他のマフィアが反射で撃った。


弾は仲間の身体に埋まった。キアロコがそれを盾として支えているあいだに。


埃はますます濃くなっていった。灰色の柱となって立ち上り、照明を覆う。


誰にも何も見えなかった。


晴れるのを待つしかなかった。


埃が落ちたとき、キアロコはまだそこにいた。


首を極めたマフィアを抱えたまま。その男は死にかけていた。


そして、奪った拳銃を自分の手に握り、突きつけていた。


「銃を下ろせ」


低く、揺るがない声だった。


「でないと、こいつを殺す」


マフィアたちは互いに顔を見合わせた。


沈黙。


キアロコが掴んでいる男が、誰かの兄弟なのか、友人なのか、それともただの一人なのか――そう問い合っているかのように。


誰も何も言わなかった。


誰も銃口を下ろさなかった。


全員が、彼を狙ったままだった。


キアロコは表情を動かさなかった。


だが内側では、胃が縮み上がっていた。


(何を言ってるんだ、俺は……こいつら、絶対に俺を殺す)


(この銃、弾が入ってるかも分からない。安全装置が外れてるかも分からない)


(くそ)


(ここで終わりか。何だって、こんなところまで来た)


深く息を吸った。


敵の照準は、一つも外れていなかった。


そのとき、テレビがついた。


隅に忘れられていた、埃をかぶった古いブラウン管。


勝手に電源が入った。


そして同じ瞬間、建物中に散らばった他の画面にも、同じ映像が映った。


老人の顔だった。


『あの子を殺さないでくれ!』


声は割れ、途切れ、震えていた。


『わしを連れていけ! 何にでも署名する! だがあの子には触れるな!』


一拍。喘ぎ。


『それと、あの少年も……生かしてやってくれ。お前たちが欲しいのは……わしだろう』


最上階では、娘を縛りつけていたマフィアたちが画面を見上げていた。


放送がどこから出ているか、すぐに察した。


一人が合図をすると、二人の男がその部屋へ向かって走り出した。


テレビの中では、老人が首を掴まれ、床から持ち上げられるのが映っていた。


映像が、唐突に切れた。


砂嵐。沈黙。


画面が、ひとりでに落ちていった。


キアロコは目を閉じた。


熱が首の後ろから上がってくるのを感じた。肩へ広がり、腕を伝って下りていく。


あの少女。


ピザ。


ぬいぐるみ。


誓い。


そして今、この人たち。


「どけ」


そう言った。


だが、それは彼一人の声ではなかった。


影が、聞いていた。


マフィアたちは引きつった笑いを浮かべ、引き金を絞ろうとした。


一人が短く笑い声を上げた。


そして、倒れはじめた。


一人ずつ。


胸を見えない何かに締め上げられたように叫ぶ者。身体の中の空気を抜き取られたように喘ぐ者。


ただ動けなくなり、その場で二つに折れ、目を大きく見開いたまま、何も理解できずにいる者。


影だった。


生きていた。


殺していた。


誰にも、止められなかった。


キアロコは黒い稲妻となって最上階へ駆け上がった。


(間に合わせる。でなければ、これは最悪の終わり方をする)


足の下で、一段ごとに階段が跳ねているようだった。


影が見えない刃となって彼を護衛し、まわりの空気を切り裂いていた。

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