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51/88

51 笑顔が、ゆっくりと消えていった



朝の光が、窓からゆっくりと部屋に入ってきていた。


カーテンのあいだから差し込み、床の上に金色の縞を描き、少しずつベッドを這い上がって――やがて、彼女の顔に届いた。


目覚まし時計が鳴った。


ソラはぱっと目を開け、跳ねるようにベッドの上に起き上がった。身体に収まりきらないほどの元気で。


天井に向かって両腕を伸ばし、微笑んだ。


外では鳥が歌っていた。空は晴れわたっていた。


今日は、絶好の――


ソラは、ぴたりと動きを止めた。


――登校日和だった。



   *



笑顔が、ゆっくりと消えていった。


足を引きずるようにベッドから出て、着替えはじめた。


一枚身につけるたびに、気分が少しずつ下がっていった。


まずスカート。次にシャツ。それからボタンを、ひとつずつ。ひとつ留めるたびに、前のボタンより重くなっていくかのように。


靴紐を結び終えたころには、目覚めたときのあの元気は、もうどこにもなかった。


部屋は静かだった。


きれいで、片づいた、美しい家の中で。



   *



台所へ下りた。


トースターに食パンを二枚入れ、冷蔵庫からオモリ・アマリージョのボトルを取り出した。


コップに注ぐと、窓の光に透けたその鮮やかな色が、小さな笑みを誘った。


カチッという音とともに、トーストが跳ね上がった。


台所のテーブルに座り、ゆっくりと、一口ずつ食べた。椅子の下で足をぶらぶらさせながら、太陽が街をすっかり目覚めさせていくのを、窓越しに眺めて。


それから、壁の時計を見た。


(家にいると、時間ってあっという間……)


ため息まじりに、そう思った。


(学校でも、こうならいいのに)


オモリの最後の一口を飲み干し、コップを流しに置き、リュックを手に取って、少ししょんぼりしたまま家を出た。



   *



外の歩道の脇で、黒い車がエンジンをかけたまま待っていた。


その横に、黒いスーツの男が立っていた。両手を前で組み、何年もこの仕事を続けてきた者の、まっすぐな姿勢で。


ソラはうつむいたまま、彼のほうへ歩いていった。


学校への憂鬱を、もうひとつのリュックのように背負って。


男は彼女を見て、思わず笑みをこぼした。


「おはようございます、ソラさん。ははっ、どうやら学校が前ほど楽しくなくなったみたいですね」


「おはよう、ホロホ……。笑わないでよ」


ソラは車に乗り込み、扉を閉めた。



   *



街は、もう目を覚ましていた。


車は朝の渋滞の中を進んでいった。


歩道では、人々が急ぎ足で歩いていた。片手にコーヒー、片手に電話を持った会社員たち。背中でリュックを弾ませて走る学生たち。車のあいだを縫うようにジグザグに走る、自転車の配達員。


年配の男が自分の店の入口を掃き、その隣では女性がショーウィンドウに「営業中」の札を掛けていた。


赤信号で、車が止まった。


目の前を、人の群れが早足で横切っていった。


一人の少年が、みんなの後ろを走っていた。もう遠ざかっていくバスに、追いつこうとして。


ソラは頬杖をついたまま、窓越しに彼を目で追った。


信号が青に変わり、車はまた走り出した。


少しずつ、通りのあいだから学校の建物が見えてきた。



   *



ソラは車を降り、小さな仕草でホロホに手を振って、ほかの生徒たちと一緒に校門をくぐった。


廊下は、声と、笑い声と、ロッカーの扉が閉まる音でいっぱいだった。


何歩も進まないうちに、三人の女の子が駆け寄ってきた。


「ソラ!」


友だちだった。


廊下の真ん中で彼女を囲み、笑顔と囁きのあいだで挨拶を交わし、小声でいろいろなことを話し、自分たちにしか分からない何かに笑い合った。


ほんのひととき、ソラは、ここにいたくない気分だったことを忘れていた。


チャイムが鳴った。


一人ひとりが別れを告げ、それぞれ違う教室へ散っていった。


ソラも、自分の教室に入った。



   *



時間が過ぎていった。


昼の光が、教室の窓から穏やかに差し込んでいた。


ソラは自分の机で、ノートに集中していた。歴史の授業に、なんとかついていこうとして。


先生が黒板に年号を書いていた。マーカーの擦れる音が、クラスメイトたちのざわめきと混ざり合っていた。


何もかもが、普通だった。


――普通すぎるほどに。



   *



だが、彼女の内側で、何かがひび割れた。


寒気。


予感。


うなじをかすめていく、目に見えない影。


そして――


ドォォン!


爆発が、校舎を揺るがした。

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