39 そのあとの静けさ
家の割れた窓から、陽が差し込んでいた。
一筋の金色の光が瓦礫を抜け、ちょうど娘の顔の上に落ちた。
彼女は、老人のそばの芝の上に、まだ倒れたままだった。
ゆっくりと、目を開けた。
光が痛かった。瞬きをした。
最初に感じたのは、背中の下の芝の冷たさだった。
次に、自分の身体の重さ。
それから、生きているという確かさ――なぜそれを疑わなければならなかったのかも、分からないまま。
ゆっくりと身を起こした。
そして、見た。
*
隠れ家だった家が、めちゃくちゃになっていた。
壁には穴。庭は廃墟。
岸辺の大きな木は、二つに裂けていた。
まわりの地面は、小さな穴と、小さくはない穴だらけだった。
台所が見えた。
皿は、もう棚になかった。床一面に割れて散らばっていた。ばかげたモザイクのように。
「何が……あったの」
そう囁いた。
何も覚えていなかった。
ただ、ぼんやりとした感覚だけが残っていた。
やわらかな嵐の中に沈んでいて、その嵐がもう去ってしまったような――目の前にあるものに焦点が合わない、頭がぐるぐると回る、そういう感覚だった。
*
そのときだった。船の音が聞こえたのは。
軍の正確さで、島の上へ降りてきた。
四隻。あるいは五隻。救助の編隊を組んで。
数人の隊員が足早に降りてきた。銃は構えていた。だが、銃口は地面に向けられていた。
そして現場を取り囲んだ。
その中の一人――最年長の、腕に階級章をつけた男――が娘に近づいた。
わずかに頭を下げて。
稽古したものではない、敬意の仕草だった。
「陛下」
そう言った。
「ご無事でいらっしゃいますか」
*
娘は立ち上がりかけていた。
ズボンの泥を払った。大して気のない手つきで。
そして、その士官を見た。
怯えた少女の顔ではなかった。
別のものだった。もっと、ずっと鋭い何か。
「ええ。無事よ」
そして言った。
「……あなたたちのおかげではないけれど」
年長の士官が、唾を呑み込んだ。
横目で彼女の傷を見た――腫れた頬骨、腕の切り傷、唇に乾いた血。
そして、さらに深く頭を下げた。
「まことに申し訳ございません。どういうわけか、通信に障害が生じておりました。
こちらから見る限り、すべて平常どおりでございました。島の近くで地震があったとシステムが報告したため、参上した次第です。
陛下にご連絡を試みましたが、応答がございませんでした」
「どうでもいい」
歩き出しながら、彼女が言った。
「死んでいたかもしれないのよ」
*
瓦礫のあいだを動きながら、彼女はその場所を見て回った。
事件現場を検分する者のように。
もっとひどいものを見たことのある者の落ち着きで――あるいは少なくとも、記憶にはなくとも、身体のほうはそれを見たことがあると知っている者の落ち着きで。
隊員たちは、彼女が何も言わないうちに、その行く手から身を引いた。
年長の士官は、口を開くべきか黙っているべきか迷いながら、彼女のあとをついていった。
結局、口を開いた。
「恐れながら、まず……ここで何があったのでしょうか。
なぜこれほど荒れているのか。地面のあの穴は何なのか。それから……」
彼は、横のほうへ目をやった。
別の隊員たちが、老人を取り囲んでいた。――まだ芝の上で、意識を失ったままの老人を。
「……あの老人は、陛下とどういう関わりが」
*
娘が足を止めた。
長い数秒のあいだ、老人を見ていた。
隊員たちは彼を半ば抱え起こし、連れていく準備をしていた。
男の服はずたずただった。顔は痣だらけだった。
それでも――それほど打ちのめされ、意識を失い、二人の兵に支えられていてさえ――その存在の何かが、「捕虜」という言葉に収まらなかった。
彼女の頭は混乱していた。まだ、思い出せなかった。
だが彼女の内側の何か――記憶に頼らない、彼女自身のある部分――は、自分が何をすべきかを正確に知っていた。
「放しなさい」
異論を許さない声だった。
隊員たちが顔を見合わせた。
年長の士官が何かを訊こうと口を開いた。だが、言葉にはならなかった。
彼らは一言も発さずに従った。老人を放した。慎重に、ふたたび芝の上へ横たえた。
「全員……」
さらに固い声で、彼女は付け加えた。
「島から出ていきなさい」
*
何かがおかしいと、彼女には分かっていた。
思い出せなくても。詳しいことが分からなくても。
あの老人が、今自分の感じているものと関わっているのだと、分かっていた。この島で起きたことと。この身体に残された傷と。
そして、さらに深いところで分かっていた。
――もし彼を連れていかせたら、自分自身についての唯一の手がかりを、永遠に失ってしまう。
*
士官たちが船に乗りはじめた。
年長の男は、ゆっくりと自分の船へ歩いていった。完全には背を向けずに。
――彼女のような者に背を向けてはならないと知っている、長く生きてきた者の習い性だった。
娘は、遠ざかっていくその男を見ていた。
そして、彼が乗り込む前に、口を開いた。
「待ちなさい」
士官が足を止めた。振り向いた。
「このことは、一言も報告しないこと」
そして言った。
「消えたくなければ」
その男は――戦争をいくつも見てきて、そのすべてを生き延びてきた、歴戦の男は――母親の前の子どものように、頭を垂れた。
「ご心配には及びません、陛下。すべて異常なしと報告いたします。ただの揺れだったと。波は島に影響しなかったと」
一瞬だけ、顔を上げた。
その目は恐れで光ってはいなかった。
本物の敬意だった。――言ったことを本当にやれると分かっている相手に向ける、敬意だった。
「ありがとうございました。それでは、失礼いたします」
そして言った。
「どうか、お気をつけて」
船に乗り込んだ。
それ以上は、何も言わなかった。
船は一隻ずつ浮かび上がり、島の空気を裂き、ほんの数分で、晴れはじめた雲のあいだへ消えていった。
*
静けさが戻った。
海だけがあった。
いつもの拍子に戻っていく波。
そして何羽かの鳥が――嵐のあとで最初に歌う勇気を出した鳥たちが――裂けた枝のあいだで、おずおずと呼び交わしはじめていた。
娘は振り向いた。
まだ芝の上に倒れていた老人が、目を開けていた。
彼女を見ていた。
彼女も、彼を見た。
どちらも、何も言わなかった。
だが二人とも、口にするまでもなく知っていた。
この島で今起きたことは、何かの終わりではない。
――始まりなのだと。




