25 静かな街路
キアロコは、あてもなく歩いていた。
陽はもう沈みかけていたが、彼はそれに気づいてもいなかった。
拳を握りしめ、目には、落ちきらない涙が溜まっていた。
こんなふうに涙を流したのは、初めてだった。
頭の中が、記憶で埋まっていく。
ソラの笑い声。話そうとしていた頃のこと。世界に向けていた好奇心。自分に向けていた信頼。
(こんなふうに終わっていいはずがない)
そう思った。
(あれだけのことを、一緒にくぐり抜けてきたのに)
*
夢なのだと思っていた。
家に着くと、靴も脱がずに入った。誰かが飛びついてくるのを待つみたいに。
だが、そうはならなかった。
家の中を見た。何もなかった。物音も、テレビの音も。
階段を上がり、部屋まで行った。
ただ、本を見て、ベッドを見て、その場所の孤独を見た。
ソラがよく遊んでいたぬいぐるみを手に取った。
じっと見つめ、それからベッドの上に置いた。
やり場のない苛立ちが、彼を窓から飛び出させた。
そして屋根から屋根へ跳んでいった。ピザ屋の前に着くまで。
*
ガラス越しに中を見た。
金髪で、青い目をした少女が、ピザを食べているのが見えた。
同じ髪。
同じ目。
ピザ屋のほうへ歩き出した――そのとき車が一台通り、ガラスの反射をさらっていった。
そこにいたのは、夫とピザを食べながら笑っている婦人だった。それだけだった。
箱にピザを入れていたリュウが、何かを感じ取ったようだった。
カウンターの奥から素早く窓の外を見た。だが、そこにキアロコの姿はもうなかった。
見えた気がしただけだった。何もかもが、あまりに速かった。
夜が、彼に寄り添いはじめていた。
*
食堂に入り、ラーメンを買った。
何分ものあいだ、ただそれを見ていた。見るためだけに買ったかのように。
空腹を忘れていた。
なぜそれを買ったのかも、忘れていた。
汁の表面に、自分の顔が映っていた。
テーブルに金を置いた。そしてラーメンも、一口も手をつけないまま、そこに置いていった。
料理人が振り返った。
少年がもうそこにいないのが見えた。うつむいて、手を震わせながら歩いていくのが見えた。
それから、金がそこに置かれているのが見えた。ラーメンも、手つかずのまま。
料理人は、静かに息をしていた。
一人の娘が彼を見た。
「口に合わなかったんじゃないですか」
料理人にそう言った。
「呼び止めて、お金を返したほうが」
料理人は彼女を見て、その肩に手を置いた。
「そうじゃない」
そして続けた。
「あいつは今、自分と孤独だけが、互いの顔をまっすぐ見られる――そういう時を通ってるんだ」
娘は、静かにそれを受け取った。
「……そうですか」
そして二人は、また仕事に戻った。
*
キアロコは走った。もっと、もっと遠くへ。
すべてから離れるように。
病院から。街から。音から。
忘れられた公園にたどり着くまで。
考えもせずに、一本の木のてっぺんまで上った。
そこからは、すべてが見えた。
そして同時に、何も見えなかった。
「こんなふうに終わっていいはずがない……」
そう呟いた。
怒りのまま、幹を殴った。
答えは、どこにもなかった。
あるのは、自分を食い尽くしていく空洞だけだった。
そうして少しずつ、気づかないうちに、彼は眠りに落ちた。
枝のあいだで、身体を丸めて。
ひとりで。
心を痛めたまま。
そして、悲しいまま。




