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18 影の目覚め




あの惨劇のあと、キアロコは三十日のあいだ、病院で昏睡状態にあった。


疲れ果てた身体が、生き延びようと闘っていた。


勇作が負わせた傷は、いまだ影によって塞がれたままだった。


昏く、まどろむような、痛みを抱えた封印。


そのあいだ、サリコと医療スタッフは、彼を生かしておくためにできるかぎりのことをした。


それでも、その胸を包む影は、落ち着かない気配としてそこに在り続けた。


誰にも、それを理解することはできなかった。


誰にも、それを制御することはできなかった。


そしてある日、ついに――キアロコが目を覚ました。


呼吸は弱かった。だが少しずつ、意識が戻ってきた。


最初に見えたのは、病室の白い天井だった。


その上で、灯りがやわらかく光っていた。


モニターの規則正しい電子音だけが、そこにある唯一の音だった。


その魂が、ゆっくりと世界へ戻ってくるのを刻むように。


動こうとした。


鋭い痛みが身体を貫いた。


傷は……まだ燃えていた。


だが最も悪かったのは、身体の痛みではなかった。


混乱だった。


「……何が、何が起きた。なんで俺はここにいる」


弱々しい声で呟いた。


身を起こそうとしたが、痛みに押し戻され、喘ぎながらまた横になった。


近くにいたサリコが、その音を聞いて急いで入ってきた。


その顔には、安堵と心配が入り混じっていた。


「キアロコ……目が覚めたのね」


微かに微笑みながら、ベッドへ近づいた。


キアロコは眉をひそめて彼女を見た。


「……何があったんだ」


そして続けた。


「なんで勇作さんは、俺を剣で刺した。なんであんなことをしたんだ」


信じられないという思いで、声が割れていた。


サリコは彼の傍らに腰を下ろした。


そして、言葉が重すぎるかのように目を落とした。


「あれは、簡単なことじゃなかった」


正直な声だった。


「父があんなことをしたのは、あなたが自分の中にあるものに、まだ備えられていないと知っていたから。あなたの力……あの影のこと」


そして続けた。


「試さなければならなかったの、キアロコ。あの力が目覚めたとき、あなたが生き延びられるかどうかを知るために」


一拍あった。


「でも……それを見ているのは、つらかった。あなたが思うよりずっと」


「試す?」


キアロコが繰り返した。怒りと混乱が混ざっていた。


「俺は、本当は何なんだ!」


そして続けた。


「これは全部どういうことなんだ。何ひとつ分からない……」


サリコは数秒のあいだ黙っていた。それから顔を上げた。


「あなたの中には、計り知れない力があるの、キアロコ。この世界に属していない力が」


そして言った。


「父も私も、それは知っていた……知らなかったのは、あなたがそれに耐えられるのかどうか」


一拍。


「影の力は、ただの贈り物じゃない。重荷でもある。人を引きずっていく力よ。……でもあなたは、もっと大きな何かの鍵なの。これから来る、何かの」


キアロコは目を閉じた。


胸の痛みが、谺のように脈を打っていた。


だが最も痛むのは――分からないということだった。


「……俺は、これからどうすればいい」


囁くように言った。


サリコが、そっと彼の腕に触れた。


「一人で立ち向かう必要はないの」


そして続けた。


「一緒に見つけていきましょう。でもまずは……治さないと。あの傷は、塞がってはいても、身体の傷以上のものを残していったから。これから来るものの、一部なのよ」


さらに、こう言った。


「そして目を覚ました今、あなたには新しい機会がある。忘れないで。あなたは一人じゃない」


キアロコは唇を結んだ。


その向こうに、何かがあった。


途方もなく大きな何かが。


そして自分は、その中心にいる……その力が自分を救うのか、それとも滅ぼすのかも分からないまま。


「……ソラは」


ふいに訊いた。


「あの子はどうしてる。俺が眠っているあいだ、何があった」


サリコは、安堵して微笑んだ。


キアロコがあの子のことを思ったということは……その内側に、まだ光が残っているということだった。


「ソラはとても元気よ」


そして続けた。


「ものすごく伸びたの。クラスでいちばん賢い子のひとりよ。すぐに馴染んで、大きくなって……強くなった。それを伝えられるのが、本当に嬉しい」


キアロコは息をついた。少しだけ、落ち着いていた。


「……近いうちに会いたい」


「会えるわ」


サリコが、あたたかい目で答えた。


「明日、父のところへ行きましょう。あの人は答えを持っている。あなたは真実を知る必要がある……すべての真実を。そして、どうしてあんなことをされたのかも」


キアロコが目を細めた。


「勇作さんが? あの人は、影の力についてもっと知ってるのか」


「あなたが思っているより、ずっと多くを」


サリコが断言した。


「そして、それを話してくれる。……でも今は休んで。これから来るものは大きい。全力で迎えられるようになっていないと」


キアロコはゆっくりと頷いた。


それでも疑いは、棘のように刺さったままだった。


「……ありがとう、サリコ」


そして言った。


「明日は……少しでも分かるといいんだが」


「分かるわ」


やわらかく微笑んで、彼女はそう請け合った。


「休んで。明日も、大事な一日になるから」


部屋を出る前に、サリコはもう一度だけ彼を見た。


「あなたは一人じゃない、キアロコ」


そして言った。


「それだけは、覚えていて」


キアロコは目を閉じた。


何かが変わろうとしている。それが分かった。


感じていた……。


自分の中で脈打っていた。


まだ理解できずにいる、あの影とともに。


そして恐れは、まだそこにあったけれど――


覚悟もまた、そこにあった。

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