第十七話 白色空間
その日、明里は買い物のために、近所を歩いていた。
そして、進行方向に濃い霧が立ち上っているのを見た。
回れ右して逃げるが、あっさり捕まり、明里は異界に飛ばされる。
飛んだ先は、部屋の中。いや、部屋とは言えないかもしれない。
なぜなら、その部屋には出入り口が存在しないからだ。
縦横二メートルほどの石タイルの床と、白い壁に四方を囲まれ、手の届きそうな高さに明かりが埋め込まれた天井があるのみで、ドアなどが存在しない。
「さて」
これは面倒なことになったぞ、と明里は呟いた。
脱出方法がわからない異界は今までにもあったが、今回は、それに輪をかけてわからない。
注意深く壁を調べて回るが、壁には隠しスイッチのようなものはなさそうだ。
大声を出してみても、虚しく反響するだけ。
壁を壊して出られないかと思い、勢いをつけて蹴ってもみたが、到底壊れそうにない感触が伝わってくるのみだった。
八方塞がりだ。
だが、明里もだてに異界での時間を過ごしているわけではない。
この状況を打破する策。それについて考えがある。
明里は靴を片方脱ぎ、それで天井の明かりを思い切り叩いた。
音を立てて割れるLEDランプ。
部屋には暗闇が訪れる。
これが明里の策。環境に影響を与えてみる、だ。
暗くて何もわからないが、手応えはあった。
霧に身体が包まれていく感覚がある。
程なくして、明里は駅前の繁華街の路地裏に立っていた。
どうせここまで来たならと、普段の買い物なら行かない店で買い物をして、家に帰った。
今日の出来事は、これでおしまい。
果たして、『次』は、どこに行くのだろうか。
それは、今はまだ、わからない。




