第十四話 自分小人
小人に会ったのは、いつのことだったか。
今、明里は小人になっている。正確に言えば、周りの何もかもが巨大化した異界にいる。
巨大な異界のサイズ感で言えば、今の明里は赤ん坊の手の平ほどのサイズだ。
帰るための霧をどうにかして探したいが、このサイズでは、その辺を飛んでいるハエでさえ、脅威になりかねない。
影から影へ、隠密行動が求められる。
言うのは簡単だが、この身体では、影から影への移動も、常に百メートル走。明里には厳しい運動量だ。
軒先で箒を使って掃除をしている人の一掃で、危うく身体が飛ばされそうになる。
興味本位で近づいてきたスズメに、危うく食べられそうになる。
普段なら両手で簡単に潰せる小バエ相手に、映画ならクライマックスシーンというほどの死闘を繰り広げる。
身体が小さいというのは、それだけでこんなにも不便なのか。
明里は、元の世界に戻ったら、小さい生き物に対して、妙な愛着が湧きそうだなと思った。
そんなことより、霧だ。
元の世界に戻るための道しるべ。
遥か上空を舞い飛ぶ鳥に怯えている場合ではない。
今までの隠密行動で、自分が今いる場所の、おおよその見当は付いている。
恐らくは、自宅周りと似た、住宅街。
それならば、霧が発生する場所も、おおよその見当がつく。
明里は、その場所に移動する。
そして、明里は霧を見つけた。
しかし、その前に立ちふさがるように、ネズミが一匹鎮座している。小さめの象ほどのサイズのネズミ。
戦っても、勝てる見込みは低いだろう。
どうしたものか、と考えていたら、状況はあっという間に動いた。
ネズミが、どこからか来たカラスに掴まれて飛んでいってしまったのだ。
これ幸いと、明里は霧をくぐり、元の世界への帰還を果たした。
帰還した場所が、全く見覚えも土地勘もない場所で、自宅に帰り着くのに一悶着あったことも、異界での出来事に比べれば、些細なことだ。
今日の出来事は、これでおしまい。
果たして、『次』は、どこに行くのだろうか。
それは、今はまだ、わからない。




