第十三話 小人坊主
その日、明里は休日を謳歌していた。
買い置きの食料も底をついたので、何か買いにスーパーへ、という道中、霧に包まれた。
霧が晴れると、大きな木を中心として低木が茂った場所で、ぽつんと立っていた。
さてどうしたものかな、と考えていたら、茂みの中から何かが出てきて、こちらに近づいてきた。
人だ。だがただの人間ではない。手の親指ほどのサイズの、小人だ。
何か一生懸命に喋っているが、声量が小さすぎてうまく聞こえない。
明里は、小人に向かって耳を近づける。
「ついてきて」
かすかだがはっきりと、そう聞こえた。
明里がサムズアップのジェスチャーをすると、小人は喜びを顔に浮かべて、茂みの奥へと駆け出していった。
明里の目線からでは気が付かなかったが、目の前の茂みには直径90センチほどの穴が空いていて、明里でも腰を屈めれば通れそうな構造になっている。
明里は、小人に誘われるままに、茂みを進んだ。
そして、明里でも直立できるくらい天井の高い広場のような場所に行き当たり、小人は歩みを止めた。
また何か喋っている。
いちいち耳を近づけるのも面倒だ、と思った明里は、その小人を掴み、肩に乗せてあげた。
これで話が通るだろう。
「村の手伝いをしてください。お礼はします」
明里は、再びサムズアップで答える。
そして、肩の小人の指示に従い、重い―――といっても明里にとっては目覚まし時計ほどの重さだ―――荷物の運搬や、家の解体などをひとしきり手伝った。
作業が終わると、広場に通され、ちょうど明里一人分空いた空間に座らされた。
それからは、宴だった。
見たことのあるようなないような民族衣装の出で立ちのダンサーが披露するダンスを見ながら、せいいっぱい大人サイズに工面された食事と酒を堪能する。
明里もご機嫌だ。
だが、ここは異界。あまり長居もできない。
その事に行き至った明里は、小人にこの辺りで霧が発生する場所はないかと尋ねる。
すると、小人の一人が、「ついてきて」とジェスチャーをして、走り出した。
明里は、慌ててその後を追いかける。
入ってきたときとは別の低木のトンネルを通り抜けていく。
そして、茂みを抜けると、小人は立ち止まり、指で指し示した。
小人の示した先には、確かに濃霧がある。
「ありがとな」
小人にお礼をいって、明里は霧に飛び込んだ。
程なくして、霧は全身を包み、明里は現実世界への帰還を果たす。
今日は、歩いて帰られる場所に出た。
今回の異界にはずいぶん長居してしまった気がするが、スマートフォンで時間を確認すると、霧に包まれた時から数分しか経っていなかった。
「法則がわかんねえんだよなあ」
今日とは逆に、数分しか滞在してなかったのに、六時間以上経過していたこともある。
一体、霧とは何なのか。
その答えは、今はまだ、闇の中だ。
今日の出来事は、これでおしまい。
果たして、『次』は、どこに行くのだろうか。
それは、今はまだ、わからない。




