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初めての感情
想像してたよりずっと楽しい。
好きなアーティストの曲も歌って、実希が歌うときは褒めてくれる。
二人で「これ歌ってほしい」とか「これが聴きたい」とか言い合って、自然に笑い合っている。
泰生と過ごして、楽しいと思ったのは初めてだった。
最後の日に、少し仲良くなるなんて皮肉な話かもしれない。
――二時間カラオケで目一杯楽しんだ二人は、居酒屋へ向かう。
カラオケでは、和気藹々と話していたが、外に出ると無言になっていた。
だが、その途中、泰生が実希に声を掛ける。
「実希ちゃん」
「……何?」
「カラオケ、付き合ってくれてありがとう。すげー楽しかった」
素直に『ありがとう』『楽しかった』と言われると、急に恥ずかしくなる実希。
(でも、何か言わなきゃな)
そう思い、実希も言葉にした。
「……私も楽しかったよ。ありがとう」
「良かった。けど、実希ちゃんともっと早くああいうふうになれてたら良かったなって」
今日の泰生は、なんだか調子が狂う。
茶化さず、素直に言葉をぶつけてくる。
でも、そう思うならなぜ、あんな距離の詰め方をして来たのか。
何か言葉を返そうと思うが、皮肉が出てしまいそうな気がして、返さなかった。




