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春の灯―ハルノヒ―  作者: 絲瀬


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表情

結局メールをせずに、翌日を迎えた。


この日は、実希は家庭教師のバイトがある日。

そのため、泰生と同じ職場の方は休みを取っていた。



夕方、家庭教師のバイトを終え帰宅していると、一通のメールが届いた。


『今日サボり?』

泰生からだった。


何だ。心配して損した。

そう思って、また返さなかった。


翌日、出社すると、また泰生の姿がない。

結局来ないまま、午前中の仕事が終わった。


訳わかんないやつ。どっちがサボりなの?

まあ、関係ないけど……

実希が考えながらご飯に向かおうと外に出ると、突然声がした。


「実希ちゃーん実希ちゃーん」


は?


後ろを振り返ると、泰生がいた。


「今からご飯でしょ? 俺も行くよ」

「あぁそう、勝手にして」

「実希ちゃん冷たい」

「冷たくない」

「昨日いなかったしメールも無視したでしょ」

「そうかもね」


「……」


急に泰生が黙り込む。

無言のまま歩く二人。

本当に予測不可能過ぎて、疲れる――


「実希ちゃん。俺、しばらく休んだでしょ」


急に泰生が口を開いた。その顔は、真っ直ぐ前を見つめ真剣な顔だった。

初めて見た表情に、戸惑う実希。


「あぁ、そうだね」


「俺、実希ちゃんからメール来ると思ってた」


真剣なフリして、何を言うんだろう。

振り回すのはいい加減にしてほしい。


「自意識かっっ……」

「寂しかった」


自意識過剰と言おうとしたら、真剣な顔で遮られた。

泰生はその後も表情を変えず、話を続ける。


「ちょっとさ、体調悪くて。でも実希ちゃん連絡くれるかなって期待して。でもやっぱり来なくて。昨日行ったら実希ちゃんいないから、メールしたのに返ってこねぇし。今日やっと会えるって思ってた」



泰生が、本当に真剣な眼差しで話すのを、実希は黙って聞いていた。


反応しない実希に、泰生は立ち止まる。



「実希ちゃん、迷惑だよな。すまん」



そう言い残し、泰生は去って行った。


昼休みを終えて戻っても、出社しに来たはずの泰生はいない。



あいつ本当に訳が分からない。

分からないけど、あの表情が実希の心に引っかかっていた。


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