固まる空気
泰生たちが乗る電車の到着時間に合わせて、実希と梨紗は駅へ向かった。
テンションが上がってウキウキの梨紗に対し、実希はというと、少し不安が残っていた。
“泰生が何かやらかさないか”ということ。
付き合ってから段違いに優しくなったものの、時折付き合う前の様に、イラッとさせられたり、自分勝手な振る舞いをすることはある。
せめて、梨紗の前でそれが出ませんように……。
しかし、実希の願いは届かなかった。
待ち合わせて、四人が顔を合わせた瞬間、泰生が梨紗を見て言い放った。
「梨紗ちゃんちっちゃいねー。小さすぎるでしょ! 動物みたいだね」
ノンデリカシーの極みだ。
実希は泰生を睨み、すぐさま梨紗に謝る。
「梨紗ごめん、本当にごめん」
「いいよ、よく言われるし」
梨紗はそう言うが、何も関係性がない状態の初対面の人間に、会ってすぐさま言われるのは気分が悪いだろう。
「ちょっと泰生っ……」
実希が泰生の方に振り向いて、声を掛ける。
しかし、そこには泰生を注意する康介の姿があった。
「泰生、それ女の子にしかも初対面の子に言うべき事じゃねーだろ」
「ちっちゃかったからつい」
「お前、俺らだから許されてきたけど、不快になる人が大多数だぞ。梨紗ちゃんと実希ちゃんに謝れよ」
「確かに、いつもの悪ノリ過ぎたかもしれん」
実希は、驚いた。
ちゃんと叱ってくれる友人は、この人の周りにちゃんといたんだ。
康介に叱られ、泰生は梨紗と実希の方を向いた。
「梨紗ちゃん、実希ちゃん、すみませんでした」
「いいですよ! 謝ってくれたし。でも……次言ったら私実希と帰ります」
梨紗はニコッと笑って返した。
実希は一言、「私の友達にまで失礼なこと言うなんてほんっとに最低」と泰生にだけ聞こえる声で放った。
そして康介まで、梨紗と実希の方を向いて謝りだした。
「昔からこいつこんなんで……二人とも嫌な思いさせて本当にごめんね。せっかく来てくれたのに」
何の責任もないのに申し訳なさそうに謝る康介。
「もうやめましょ? せっかく集まったんだし楽しみません?」
場の空気を和ますように梨紗が言った。
それに続いて、康介も「じゃあ、行こうか」と声を掛けた。
そのまま自然に、梨紗と康介、実希と泰生が並んで歩いた。
小さな声で「ごめん」と謝る泰生。
実希は、「次やったら知らないから。二度とすんな」と小声で返した。
後ろの二人が沈黙しながら歩く中、前の二人は初対面とは思えないくらい話が弾んでいた。




