男との訣別
「謝って許される事ではないけどな。実希ちゃん、どうする?」
男が頭を下げてからしばらくの沈黙があったが、泰生が切り込んだ。
実希は、自分の気持ちを正直に告げた。
「本当に嫌だった。されたことも許せないと思う。あなたが警察や周りを上手く騙すから、頼りになる所もなかったし。だけど、二度と目の前に現れないでいてくれるなら、警察とかは行かない。もう本当に、今日で最後にして」
男は、黙ってはいるものの深く頷いた。
「実希ちゃん優しくて良かったな。本当に二度と現れんなよ。次現れたら、その時はもう容赦しないから」
男は泰生の方を向き、「実希をよろしくお願いします」と言って、その場から去っていった。
実希は体の力が抜け、床にへたり込みそうになるが、泰生がそれをすぐに支えた。
「ごめん、俺がもっと強く行動出なかったから」
泰生はそう謝るが、実希の中では違った。
「結果的に、良かったんだと思う。あの人あれでもプライド高いから、泰生に敵わないって自分で受け止めたんじゃない、かな……」
泰生が守ろうとしてくれていることは、実希には十分伝わっていた。
「だから、ありがとう」
実希がそう言うと、泰生は優しく微笑んだ。
この後、男が実希の前に現れることは、本当になくなった――




