迫る影
その日は、一日中楽しかった。
思ってた以上に、同じ温度ではしゃげる相手だということも分かった。
それから二人は、一週間に一回は会うようになっていた。
出掛ける時もあれば、飲みに行く時もある。
家でゆっくり過ごす日もあった。
会う回数を重ねれば重ねるほど、気持ちが大きくなっていた。
ちょうど一ヶ月の時に、泰生が訊ねた。
「このまま俺と付き合っていてくれる?」
「うん。よろしくお願いします」
実希は迷わずに返事をしていた。
――付き合って一ヶ月と少し経った頃。
その日も実希は、泰生と待ち合わせをしていた。
しかし、電車の遅延で、三十分ほど遅れてくるという泰生。
実希はその間、ショッピングをして待つことにした。
ふと、嫌な視線が突き刺さる。
実希は知っている。この視線の正体を。
何度も何度も浴びてきた視線だった。
(気付かない振りをしよう)
どれだけ逃げても、少し離れた先からずっと付き纏う視線。
(泰生、早く来て……)
その時、実希は思い出した。
泰生が一ヶ月前に言ってくれた言葉を。
実希は泰生にメールを送った。
『待ってる間ショッピングしてたんだけど、多分あいつが着いてきてる』
泰生からは即座に返信が来た。
『まじ? 危なくない所に隠れて、女子トイレとか。それか、店員さんと話せる所ある? あと二駅で着くから』
お気に入りの店があったが、着いてくる可能性がある。
実希は泰生の言う通り、トイレに駆け込んだ。




